第146回 鉄道総研月例発表会:浮上式鉄道の試験状況と技術開発

浮上式鉄道の技術開発


浮上式t鉄道開発本部(技術部) 部長 古木 勉

 山梨実験線での平成9年4月から 3年間の走行試験成果と技術開発に対して、平成12年3月に当時の運輸省の下に設置された実用技術評価委員会より、「実用化に向けた技術上のめどは立った」との評価を受けた。一方、今後概ね 5年間、山梨実験線で走行試験を継続しつつ、信頼性・耐久性能の検証、コスト低減技術開発および車両の空力的特性の改善を進めることとなった。実用技術評価の概要、技術開発の状況と今後の計画について報告する。


山梨実験線における試験状況


浮上式鉄道開発本部(山梨実験センター) 主査 高尾 真二

 山梨実験線では、信頼性・耐久性の検証を行うために高速繰り返し走行を実施し、累積走行距離の延伸をはかると共に、コスト低減に関わる技術の検証、車両の空力特性改善等、各種走行試験を進めている。これらの試験走行の合間には試乗会を実施し、一般の方々にもマグレブリニア車両の乗車体験をしていただいている。本発表では、このような山梨実験線における走行試験状況について紹介する。



山梨実験線ミリ波列車無線実験システム


浮上式鉄道開発本部(研究開発部) 主任研究員 新倉 弘久

 ミリ波無線では、伝送速度 30〜50Mb/s と現行LCX無線の 100〜170倍の伝送容量が確保できる。山梨実験線ミリ波無線システムは、次世代列車無線構築を目指す試験システムであり、500km/h の高速移動中の対列車通信で、地域率 99.99% で誤り率 1×10-4 以下の連続したデータ伝送回線を確保できる見通しを得た。またデジタル動画像伝送の成功により、システムの実現可能性と有効性を明らかにするなど、一定の成果を上げている。ここでは、本システムの概要及び試験結果について紹介する。



分散型誘導集電装置の開発


浮上式鉄道開発本部(研究開発部 浮上式技術) 主任研究員 山本 貴光

 浮上式鉄道車両の車上電源として分散型誘導集電システムの開発を行っている。このシステムは集電機能を有する他、リニア車両の乗り心地を改善するためのダンピング制御機能を有することを特徴としており、山梨実験線車両に実際に搭載して走行試験を行うことを計画している。今回、山梨用の各種装置の製作が完了し組み合わせて定置における基礎的な性能確認試験を行ったのでこの結果について概要を紹介する。



超電導コイルの機械発熱に関する研究


浮上式鉄道開発本部(研究開発部 極低温技術) 副主任研究員 清野 寛

 浮上式鉄道車両の超電導磁石は、走行中に地上コイルを通過することで生じる電磁気的な外乱によって加振される。この時、超電導磁石の熱負荷が増加する。本研究は、熱負荷の一つである超電導コイル部の発熱低減を目的として実施している。超電導コイルを単体で加振して、上限振動と熱負荷の関係を把握するとともに、超電導コイル周上の歪分布をFEMで解析した。これらの結果から、超電導コイル部での発熱に関する考察を行った。



新型車両の開発


浮上式鉄道開発本部(車両部) 副主査 山本 克也

 山梨実験線車両は現在新たに甲府方先頭車と長尺中間車を製作している。甲府方先頭車は空力的環境影響低減ために、先頭車の範囲で可能な限り長くした先頭形状を有した試験用特殊車であり、中間車は乗り心地向上と車内環境の改善を目標とした営業線イメージ車である。いずれも車体中間部の断面をこれまでの円錐曲線断面から下側を角形に変更し、さらに新たに開発した空力ブレーキ及び布敷フェアリング等の概要について紹介する。



新しいき電方式の開発


浮上式鉄道開発本部(電気部) 副主査 重枝 秀紀

 浮上式鉄道における電力供給システムの分野では、さらなるコスト低減のため、従来3系統ある電力変換装置やき電ケーブルを2系統にする新しいき電システムの開発を行っている。開発に際しては、従来システムと同様に1系統が故障しても列車走行が可能となるよう工夫が必要であり、現在2つのシステムについて検討を進めている。本発表では各システムの構成と特性および課題について報告する。



地上コイルの耐久性検証


浮上式鉄道開発本部(研究開発部 電磁路) 主任研究員 鈴木 正夫

 浮上式鉄道用地上コイルは、長期間の屋外使用が前提となるばかりでなく、膨大な数が対象となる。従って、地上コイルの開発においては、コスト低減と信頼性の確保が営業線に向けた必須条件になっている。ここでは、コスト低減を狙いとしたRIM (Reaction Injection Molding) 方式地上コイルについて、30年相当の屋外使用を想定した耐久性検証を実施した。本発表では、RIM方式の概要と実機コイルの耐久性検証結果について述べる。

              
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