第149回 鉄道総研月例発表会:鉄道システムのダイナミクス

鉄道力学研究部の研究活動


鉄道力学研究部 部長 鈴木 康文

 鉄道力学研究部は、分野は異なるが「力学」という共通のキーワードで結びついた「集電力学」、「車両力学」、「軌道力学」及び「構造力学」の4つの研究室で構成されている。架線・パンタグラフ、車両・軌道/構造物といった相互作用に関わる基礎的な問題、境界領域の問題を大きな課題として取り組んでいるが、その研究成果をもとにした応用技術についても扱っている。ここでは、当研究部の活動の概略を紹介する。


架線・パンタグラフ間の接触力変動解析


鉄道力学研究部(集電力学) 研究室長 網干 光雄

 架線・パンタグラフ系では、高速走行時において良好な接触状態を保つことが重要な技術的課題の一つである。架線・パンタグラフ間の接触力変動の主な要因として、支持点間隔ならびにハンガ間隔に起因する変動、波状摩耗等のトロリ線凹凸による変動、空気力、車両振動等その他の要因によるものが挙げられる。本発表ではこれらの変動機構に関する最近の解析結果を示すとともに、高速集電系に必要とされる動力学的要件について述べる。



高速列車のトンネル内動揺


鉄道力学研究部(車両力学) 主任研究員 藤本 裕

 新幹線などの高速列車がトンネル内を走行するときには、明かり区間では観測されないヨーイングを中心とした左右系の車両動揺が発生する。このため、トンネル内での空気力発生メカニズムやそれによる車両動揺の状態を調べ、その防振対策を検討してきた。本発表では、空気力は車両動揺と相互作用があるのか、また、どのように空気力が発達して車両加振力になるか、得られた知見を紹介するとともに、今後の対策について言及する。



乗り上がり脱線のメカニズム


鉄道力学研究部(車両力学) 副主任研究員 宮本 岳史

 鉄道車両の走行安全性に関し重要な課題である急曲線部における低速走行時の乗り上がり脱線メカニズムについて、理論と研究の現状を概説する。急曲線通過時の乗り上がり開始から脱線に至るまでの輪軸の挙動や車輪/レール間に作用するクリープ力に関しては未解明の部分がある。鉄道総研では、これらの基礎的な研究に取り組んでおり、構内試験線での脱線走行試験を中心にその内容等について報告する。



車両/軌道相互作用のレール側摩耗への影響


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 金 鷹

 急曲線外軌において問題であるレール側摩耗に関して、車両と軌道の相互作用のうち横圧とアタック角に着目し、それらの側摩耗への影響を現地測定試験と室内試験により検討した。また、実態調査により得られた車輪とレールの摩耗形状から接触状態を明らかにし、側摩耗との関係を検討した。それらの検討結果を報告する。



軌道動的応答シミュレーションによる軌道沈下予測


鉄道力学研究部(軌道力学) 研究室長 石田 誠

 有道床軌道における道床および路盤の沈下、あるいはそれらの沈下の軌道長手方向の分布である高低狂いの予測に関しては、軌道破壊理論として古くから研究が進められてきた。本発表では、新たに構築した車両/軌道動的応答解析モデルと道床沈下則と、実際の軌道における道床沈下の実態を把握するために行われている現地測定結果について報告する。



フローティング・ラダー軌道の衝撃応答特性


鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 奥田 広之

 フローティング・ラダー軌道は低支持バネ系数の防振材および防振装置でコンクリート路盤より浮かせた構造であるために、高速鉄道に導入するには、レール表面欠陥等(レール溶接部)の衝撃輪重による動的負荷特性の定量的な評価が必要である。ここでは、鉄道総研構内のループ線での重錘落下試験およびレール表面欠陥を有するフローティング・ラダー軌道の車両走行シミュレーション解析を行い、フローティング・ラダー軌道の衝撃応答特性について検討した。


ダンパー・ブレース付き鉄道高架橋の制振性能評価


鉄道力学研究部(構造力学) 研究員 小林 俊彦

 地震時における列車走行安全性を高める手段として高架橋の水平横変位を抑制することが有効であり、高剛性で高減衰な橋脚構造の一つとして、鋼製ダンパー・ブレースを取付けた鉄筋コンクリート橋脚構造を開発した。この構造は既設高架橋の耐震補強などにも用いることができる。ここでは振動台を用いた縮尺高架橋モデルの加振試験などを通して得た鋼製ダンパー・ブレース付き鉄道高架橋の制振性能について紹介する。


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