第162回 鉄道総研月例発表会:構造物の診断技術

最近の構造物診断技術の開発


構造物技術研究部 部長 村田 修

 列車の安全走行を支える構造物の量は膨大で,その健全度を診断する維持管理の業務に多くの労力がかかっている。そこで,本発表では,最近、鉄道総研で取り組んでいる維持管理関係の研究開発の全体の取り組みの概要,特に,圧電材料を用いた基礎構造物の非破壊検査法などのインテリジェントマテリアルをはじめとした新しい構造物診断技術について紹介する。


既設コンクリート構造物の健全度評価システム


構造物技術研究部(コンクリート構造) 副主任研究員 曽我部 正道

 老朽化していく既設コンクリート構造物を適切に維持・管理していくため,現場での運用を重視した総合的な健全度評価システムを開発した。測定システムとしては,目視検査支援システム,ひび割れ画像の自動処理,鉄かぶり,中性化,含有塩分量などの観点からシステム開発・検証・マニュアル作成を行った。評価システムとしては,荷重相当値,等価繰り返し回数等の荷重評価,中性化,塩分浸透等の耐久性評価,鋼材腐食を考慮した断面照査などのプログラムを開発した。



腐食したリベット桁の耐荷力


構造物技術研究部(鋼・複合構造) 研究員 谷口 望

 本報告は,取替によって発生した実際の上路2主単純桁に対して,腐食測定・静的載荷実験を行い,その耐荷力特性について検討するものである。腐食測定は,腐食部分に20mmの正方形のメッシュを設定し,各点の残存板厚を測定した。載荷実験では,2主桁同時にそれぞれ2点の計4点載荷とし,実台車載荷を模擬した。実験結果より,腐食したリベット桁の耐荷力評価方法について検討し,鋼橋の診断技術に有益な情報を提供する。



木杭基礎橋脚の新しい健全度評価手法


構造物技術研究部(基礎・土構造) 研究員 稲葉 智明

 従来,基礎及び橋脚躯体の健全度は,「衝撃振動試験法」による実測固有振動数と「標準値算定式」による固有振動数の標準値を比較することで評価していた。しかし,この数式は統計式である為に基礎の安定計算と結びつく物理的な根拠はなく,具体的にどのような荷重条件に対し安定なのか,といった評価指標となり得ていなかった。ここでは木杭基礎橋脚を対象に,新たに作成致しました健全度評価手法を紹介する。



列車荷重により誘発されるAEを用いた非破壊検査手法


構造物技術研究部(基礎・土構造) 主任研究員 羅  休

 鉄道橋梁の下部工は,地中部に主要な構造部材である基礎を有するが,目視により検査を行うとすると,周辺地盤の掘削が必要になる。これらの掘削は,高いコストを必要とする上,列車走行に支障をきたすため,現実的ではない。鉄道総研では,列車走行に伴い構造物の損傷部から発生するアコースティック・エミッション(二次起因のAE)を利用した経済性に優れた検査法を開発した。また手法の妥当性を検討するために,現場計測実験を行ったので,成果を紹介する。



人工加熱による赤外線法を用いたコンクリートの剥離検知


構造物技術研究部(コンクリート構造) 主任研究員 鳥取 誠一

 気象条件により生じたコンクリート表面の温度分布を赤外線カメラにより測定し,剥離を検知する赤外線法には,測定面に接近する必要がなく,測定時間も僅かである等の特長がある。しかし,この方法では気象条件によって温度分布が異なるため,測定精度等に課題が残されている。そこで,本報ではコンクリート表面を人工加熱することにより,高精度な測定を行う方法について検討した。



光ファイバー,導電塗料によるトンネル覆工常時監視システム


構造物技術研究部(トンネル) 主任研究員 小島 芳之

 トンネルの一般的な変状監視法である内空変位計測やひび割れ計測等は,長大区間における常時監視には必ずしも適さない。そこで,光ファイバーを覆工面に敷設することによって覆工の歪みやひび割れの進展・位置を常時連続監視する手法の開発を行った。また,より安価な導電塗料を覆工面に塗布することにより覆工のひび割れ発生を導電性の低下によって検知する手法の開発も行っている。ここでは,これらの手法の概要を報告する。



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