第163回 鉄道総研月例発表会:軌間可変電車の開発

軌間可変電車の開発経緯


研究開発推進室(GCT) 担当部長 小田 和裕

 現在開発を進めている軌間可変電車は、通称「フリーゲージトレイン」と呼ばれる。主要素部品の原理確認を経て、現在は走行試験で、安全性や信頼性を確認する実証試験の段階にある。平成11年から2年間に渡ってアメリカで標準軌を約60万km走行し、平成13年度以降、JR西日本・JR九州・JR四国の協力を得て、日本国内で軌間変換試験と在来線(狭軌)での試験を実施した。本講演では車両の原理や試験成果など最新の情報を報告する。


軌間可変台車の開発


車両構造技術研究部(走り装置) 主任研究員 豊岡 友裕

 新在直通を目的とした軌間可変台車では、在来線の狭軌に対応するため、軌間変換時の車輪移動量が大きく、また電動台車とするため、狭軌時の狭隘な車輪間へ新幹線用動力機器類を構成する必要があった。そこでダイレクトドライブモータを使用した独立車輪方式、平行カルダン駆動装置を用いた輪軸一体回転方式の、2種類の軌間可変電動台車を開発した。本発表では両台車の特徴・構造、及び軌間変換動作等について解説する。



軌間変換装置の開発


軌道技術研究部(軌道管理) 主任研究員 岡井 忠生

 軌間変換装置は、軌間の異なる接続点に設置され、軌間可変電車がその上を通過することによって車輪間隔が変更され、そのまま車両は軌間の異なる線区を直通することができる仕組みとなっている。本装置の研究開発は平成6年に始められ、平成15年3月には6世代目の軌間変換装置が九州新幹線新八代駅(仮称)付近に設置された。これまでの軌間変換装置の開発経緯と機構及び試験結果について報告する。



変換制御装置の開発


車両制御技術研究部 部長 潤賀 健一

 軌間可変電車は軌間変換装置上を走りながら軌間を変える。車両側での軌間変換をバックアップするため、軌間変換中に異常が発生した場合速やかに列車を停止させる制御システムを開発した。ここでは、このシステムの中心となる変換制御装置の仕組みと試験結果について概要を報告する。



主回路システムの試験結果と解析


車両制御技術研究部(駆動制御) 研究室長 秦   広

 軌間可変電車の主電動機として、A方式台車には直接駆動式の永久磁石界磁同期機、B方式台車にはカルダン駆動に対応した誘導機を製作した。主変換装置、主変圧器などどあわせて主回路システムを構成している。また直流、交流あわせて5電源対応としたことも特徴のひとつである。今回は国内、アメリカでの走行試験結果、長期耐久試験終了後の検査結果について報告する。



軌道関係試験結果と解析


鉄道力学研究部(軌道力学) 研究室長 石田 誠

 半径400m程度の急曲線および直線を軌間可変電車が走行する際に、車両と軌道の間に作用する輪重、横圧あるいは道床振動加速度等の軌道の動特性を測定した結果と関連する軌道動的シミュレーション解析結果を基に、営業線車両との比較も含めて、主にばね下質量に着目した軌間可変電車の軌道への影響に関する検討結果を報告する。



車両関係試験結果と解析


車両構造技術研究部(走り装置) 研究室長 徳田 憲曉

 軌間可変電車用台車として開発を進めている、車輪直接駆動モータを用いた独立車輪方式の台車と、平行カルダンを用いた輪軸一体回転方式の台車について国内、アメリカで走行性能及び長期耐久試験を行ってきた。ここでは、試験の結果明らかになった両台車の軌間変換性能・高速性能・曲線通過性能・高速耐久性能について整理するとともに、両方式の性能比較等について総括し報告する。



第163回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 2003 Railway Technical Research Institute