第165回 鉄道総研月例発表会:最近の電力技術

最近の電力関係技術の研究開発


電力技術研究部 部長 中道 好信

 高品質の電力を電気車に供給するために、電車線・き電(電力供給)の各分野で電力関係の研究開発を実施している。電力関係においては、21世紀のキーワードの代表である「環境問題」、また日本独特の問題でもある「少子化」などを考慮して基礎研究から実用化研究までの幅広い研究開発を行っている。本発表では、最近の成果や研究開発状況および今後の展望について概観する。


交流高速用PHCシンプル架線の開発


電力技術研究部(電車線構造)主任研究員  佐藤 勇輔

 環境問題に対応して電車線材料においてもエコマテリアル化の検討が要求されている。このため、まずエコマテリアル化に適した線材を抽出、その後、交流高速用(160km/hまで適応できる架線および200km/hまで適応できる架線)としてこの線材を使った架線構造を検討した。検討した架線について想定列車密度での電流容量と集電特性に関してコンピュータシミュレーションを行い、集電試験装置において検証試験を行った結果について述べる。



新幹線オーバーラップ箇所のトロリ線摩擦低減策


電力技術研究部(電車線構造)副主任研究員 清水 政利

 新幹線のオーバラップ箇所では、トロリ線摩耗の進行が一般区間と比較して速く張替の原因となるなど、メンテナンス上の弱点箇所になっている。この原因には、従来考えられていたパンタグラフ移行時に発生する過大な接触力の他に、トロリ線の過大な偏位の影響によるものがあり、偏位を標準ジグザグ量である150mm以内に調整することにより、オーバラップ箇所の摩耗率を一般箇所と同程度に低減できることを検証したので報告する。



Cu-Ni-Si合金トロリ線の開発


電力技術研究部(集電管理)主任研究員 菅原 淳

 高速集電には比強度(引張強度÷線密度)が大きいトロリ線が必要である。そのため、鋼心を有するCSトロリ線やCu-Cr-Zr合金を適用したPHCトロリ線が開発されているが、高強度銅合金トロリ線の新たな選択肢として、Cu-Ni-Si合金を適用しトロリ線を製作した。このCu-Ni-Si合金トロリ線は導電性はやや劣るものの、PHCトロリ線より低廉でCSトロリ線をしのぐ高強度を実現できる。本発表ではその諸特性について報告する。



電車線の異常がパンタグラフに及ぼす衝撃力の検討


電力技術研究部(集電管理)副主任研究員  福谷 隆宏

 パンタグラフ事故の多くは異常が発生した電車線との衝突によるものである。これを予防するためパンタグラフに加速度センサを取り付けて監視することが考えられるが、センサ取付位置や衝撃時加速度と、異常状態およびパンタグラフ打痕等との関係を把握しておくことが必要となる。そこでこれらを調査するため集電試験装置による走行試験を行い、電車線異常状態とパンタグラフ各部が受ける加速度との基礎的な関係を得たので報告する。



センサ構成の容易なパンタグラフ接触力測定法


軌道力学研究部(集電力学)主任研究員 池田 充

 近年、集電性能評価のためのパンタグラフ接触力測定の実施例が増えつつある。接触力測定法には、舟体に作用する力のつり合いから接触力を求める方法と、パンタグラフの動的な逆問題解析から接触力を求める方法の2つがある。後者は前者に比べてセンサ構成の自由度が高いという長所がある反面、架線偏位に応じて測定精度がばらつくという問題点があった。そこで後者の手法を改善した、簡便なセンサ構成で接触力測定を行う手法について報告する。



直流変電所用光CTの開発


電力技術研究部(き電)研究室長 長谷 伸一

 直流変電所において、直流電流を広範囲に、かつ他の回線電流の影響を受けずに測定出来る直流電流測定用光CTを開発した。この光CTはセンシングファイバを、測定対象電線に周回させて電流を計測するアナログ変調ループ方式によっており、測定可能最大直流電流は±20,000A、重量は既存のホールCTの約1/4(3.0kg)である。この光CTの構成、基本特性および直流変電所における実負荷電流測定の結果について報告する。



直流き電回路の高抵抗地絡検出法


電力技術研究部(き電)主任研究員 奥井 明伸

 負荷電流に比べて事故電流そのものが小さい高抵抗地絡事故が発生すると、従来の保護継電器では負荷電流と事故電流の区別がつかず、事故電流が流れ続けることで最終的に大事故に至る可能性も少なくない。そこで、直流き電回路に高調波を注入することで得られる回路定数の変化から高抵抗地絡を検出する検出法を提案し、同原理に基づく検出装置を試作・検証した。ここでは、同装置の検証試験結果について報告を行う。



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