第167回 鉄道総研月例発表会:鉄道固有現象の解明

鉄道固有現象に関する最近の研究


鉄道力学研究部 部長 鈴木 康文

 鉄道力学研究部では、架線・パンタグラフ、車両・軌道・構造物の接触や相互作用に関わる現象解明についての基礎的な研究を重要課題として取り組んでいる。振動乗り心地、走行安全性の向上や保守の省力化、環境適合性向上などにおいて、ブレークスルーを図るためにはこれらの研究は必要不可欠となる。ここでは、鉄道力学分野に関する鉄道固有現象についての研究の動向について紹介する。


間欠孔を有するパンタグラフホーンの空力騒音低減メカニズム


鉄道力学研究部(集電力学) 主任研究員 池田 充

 低騒音パンタグラフ用のホーンにはエオルス音低減用の間欠孔が設けられており、パンタグラフの低空力音化に大きく寄与しているが、その減音原理自体はあまり明確ではなかった。そこで、ホーンを模した2次元円柱を用いた風洞実験を実施し、間欠孔の存在が空力音の発生や流れ場の様子にどのような影響を与えているのかについて調べた。その結果、間欠孔による空力音低減メカニズムが明らかになったので、報告する。



実台車加振実験による大変位車両運動シミュレーションの検証


鉄道力学研究部(車両力学) 副主任研究員 宮本 岳史

 地震時の車両挙動の調査と大変位車両運動シミュレーションの検証を主な目的として、実物大の車両の加振実験を実施した。50tの供試体を加振することの出来る振動台上に、長さ5mの軌道を敷設し、その上に実物の新幹線用台車と半車体の荷重枠を搭載し、正弦波の大振幅変位で加振した。この実験の内容・結果およびシミュレーションの検証結果を報告する。



クリープ力試験装置による車輪/レール間作用力の把握


鉄道力学研究部(車両力学) 研究員 土井 久代

 乗り上がり脱線時の車輪/レール間の接触面における作用力を把握する目的で、実物の一輪軸を軌条輪上で転走させクリープ力特性試験を行った。クリープ力試験装置により左右の軸箱に負荷する荷重を変化させてフランジ乗り上がり開始状態に設定し、アタック角、輪重、車輪上昇量、走行速度が内外軌の車輪/軌条輪間のすべり率やクリープ力に及ぼす影響について調べたので、その結果を報告する。



3次元混合潤滑モデルによる車輪/レール間の粘着力解析


鉄道力学研究部(軌道力学) 副主任研究員 陳   樺

 レール・車輪間の粘着係数は、列車の走行安定性及び加速・減速性能に影響を及ぼす重要なファクターの一つである。また、レールと車輪間の粘着係数が低下するとレール表面に空転傷や車輪踏面にフラットなどが発生し、メンテナンスコストが増大することが大きな問題となる。本報では、湿潤時のレールと車輪間の粘着力を推定するためにEHL理論を適用して構築した3次元接触モデルとそれを用いて得られた解析結果について紹介する。



道床沈下抑制から見た最適まくらぎ形状


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 名村 明

 現行のまくらぎ形状での繰返し載荷試験において、まくらぎ端部付近のまくらぎ/道床間の隙間の発生に起因すると考えられる大きな沈下量が見られ、この現象にまくらぎのたわみ形状が影響している可能性が考えられた。ここでは、長さおよび高さを変えたまくらぎを用いた実物大模型軌道の繰返し載荷試験を行い、道床バラストの繰返し変形特性に及ぼすまくらぎ形状の影響を検討した結果について述べる。



フローティング・ラダー軌道の耐荷・防振性能の評価


鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 奥田 広之

 フローティング・ラダー軌道は鋼レール+コンクリート縦梁からなる複合レールを低剛性バネで間欠的に支持したもので、軽量マス・スプリング・システムをコンセプトにしている。このフローティング・ラダー軌道を対象に車輪フラットなどにより発生する衝撃輪重に対する耐荷性能ならびに防振性能について解析と実験の両面から検討を行った。本発表ではその検討結果について報告する。



ラーメン高架橋の地震時破壊シミュレーション


鉄道力学研究部(構造力学) 副主任研究員 上半 文昭

 兵庫県南部地震において鉄道の鉄筋コンクリートラーメン高架橋は大きな被害を受けた。そのような大地震時における構造物の動的挙動を崩壊にいたるまで解析することが可能な応用要素法を用いた数値シミュレーション法について、その概要を紹介するとともに、適切な地震対策を選定することを目的としてラーメン高架橋の耐震補強部位の違いによる耐震性能への影響などについて検討したので、その結果について紹介する。



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