軌道技術研究部 部長 高井 秀之
軌道は鉄道車両を直接支持・案内し走行安全性に直結することから、技術開発に際しては信頼性が最重要視され、新技術の導入には消極的な面があった。現在は、近年急速に進んだモニタリング技術、解析技術、予測技術、最適化技術などを取り入れて開発された要素技術の体系化の段階であると同時に、今後の鉄道のシステムチェンジに対応した技術革新に向けての助走期間でもある。これら最近の軌道技術の動向を概観する。
軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員 片岡 宏夫
近年、乗り心地の向上、保守の低減のために分岐器介在ロングレールの適用範囲の拡大が求められている。そこで、分岐器が連続して介在する場合のロングレール軸力を評価するために有限要素解析モデルを構築し、また、高架橋上の直結分岐器における、温度変化に伴う桁の伸縮を考慮したロングレール軸力解析プログラムを開発した。これらの解析法により、各種条件下の分岐器介在ロングレールの敷設条件の検討が可能となった。
軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員 若月 修
近年、接着絶縁レールは、継目板の折損、接着剤の剥離及び継目ボルト穴内部の絶縁不良が発生し、その対策が求められている。そこで、現地試験によって継目板発生応力を把握するとともに、対策として超音波探傷法による検査法及び絶縁性能劣化箇所の補修法を提案した。また、改良形接着絶縁レールの考案と性能試験結果について述べる。
軌道技術研究部(軌道・路盤) 副主任研究員 村本 勝己
噴泥現象メカニズムの解明とは、「噴泥するから軌道変位が起こるのか、軌道変位があるから噴泥するのか」という、これまで曖昧にされてきた主従関係を明確にすることに帰着する。本報告では、主に実物大模型試験に基づいて有道床軌道および既設線省力化軌道について路盤噴泥メカニズムの解明を行い、それぞれの構造において発生する噴泥現象について検討する。また、これらの新しい考え方に基づいた噴泥対策法を、従来の方法も含めて紹介する。
軌道技術研究部(軌道管理) 研究員 石上 寛
日本では、在来線の曲線通過速度向上にあたって車両傾斜車両(振子車両)が導入されている。振子車両が曲線を滑らかに走行するためには、通り変位や水準変位とともに曲線半径やカントなどの曲線線形諸元を適切に管理する必要がある。本報告では、乗り物酔いに影響する低周波の左右動に着目し、これに影響する曲線線形の崩れを検出・評価する手法を紹介する。
軌道技術研究部(軌道管理) 副主任研究員 川口 昭人
有道床軌道においてマルタイによる保守を効率的かつ効果的に実施するためには、運用上の様々な制約を考慮したうえで極力運用ロスを少なくし、なおかつ軌道状態の劣化に応じて適切な時期に適切な箇所を保守するような計画が必要である。本報告では、そのような保守計画が作成可能な数理計画モデルの概要と実線区におけるモデルの適用結果、および構築したマルタイ運用計画作成支援システムの概要について述べる。
軌道技術研究部(レール溶接) 主任研究員 設楽 英樹
レール継目部等に取付けられるレールボンドは、日本においてはすず−亜鉛系の低温ろう材によるろう付けによってレールに接合される場合が多い。このボンドがろう付部から脱落する場合があり問題となっている。本報告では、ボンド脱落を防止するために検討したパルス反射式超音波探傷によるボンド接合部の品質評価法について紹介する。
鉄道力学研究部(軌道力学) 研究室長 石田 誠
急曲線内軌に生じる波状摩耗により大きな輪重変動が発生し、それによる騒音・振動問題とともに道床沈下進みも線路保守上の大きな問題となっている。そこで、現地試験によりその妥当性がある程度検証された軌道沈下予測モデルを用いて、波状摩耗による道床沈下進みへの影響を評価し、それを抑制するレール削正と道床つき固めの効果を明らかにした。その結果、道床沈下進みに対するレール削正の効果が相対的に大きいことが明らかになった。
Copyright(c) 2005 Railway Technical Research Institute