第190回 鉄道総研月例発表会:構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術に関する最近の研究開発


構造物技術研究部 部長 市川篤司

 構造物技術研究部では、「技術基準整備」、「構造物の維持管理に係わる研究開発」、「建設費節減を図る研究開発」、「耐震設計・耐震診断に係わる研究開発」を主体に、また「駅空間のユニバーサルデザイン・快適化」および地盤振動問題などの「環境問題」にも力を注いで研究開発を進めている。これら構造物に係わる最近の研究開発の概要を紹介する。


不整形地盤における高架橋軌道面の折れ角の評価法


構造物技術研究部(耐震構造) 研究員 川西智浩

 不整形地盤では波動が複雑に伝播し、そこに建設される構造物は複雑な挙動をするため、高架橋軌道面の折れ角にも大きな影響を及ぼすと考えられるが、不整形地盤における折れ角の評価方法はまだ検討されていないのが現状である。本報告では、不整形地盤における面外加振時の2次元FEM解析を実施することにより不整形地盤の波動伝播特性について明らかにするとともに、その波動伝播特性に基づいた高架橋軌道面の折れ角の評価方法を紹介する。



線路上空利用建築物の免震・防振構造システム


構造物技術研究部(建築) 主任研究員 武居 泰

 線路上空を利用した建築物は、下階に列車が走行することから高い耐震安全性が求められるほか、室内に伝搬する列車振動を低減させる必要がある。そこで、地震に対する免震機能に列車振動に対する防振機能を付加させた新しい構造システムとして、低鉛直剛性の積層ゴムを用いた中間層免震構造を提案した。実験や解析により、本構造システムが耐震性および防振性に優れていることを確認するとともに、設計時の留意点等を明らかにした。



大変形領域におけるRC高架橋柱の地震時挙動


構造物技術研究部(コンクリート構造) 副主任研究員 田所敏弥

 曲げ破壊するRC柱は比較的大きな変形性能を有するが、大変形領域においては荷重の繰返しによって耐力低下を生じるため、耐震標準では地震時の応答を比較的耐力低下が顕著でない領域(N点)に制限することとなっている。しかし、既設の高架橋柱は耐力が比較的小さいため、大規模地震時に大変形が生じることが懸念されている。そこで、本震と余震を想定した振動台実験を行い、大変形領域におけるRC柱の地震時挙動について検討した。



コンクリート床版のひび割れの影響を考慮した連続合成桁の設計法


構造物技術研究部(鋼・複合構造) 副主任研究員 池田 学

 連続合成桁は、単純合成桁と比べて桁断面を小さくできるため合理的な構造である。しかし、中間支点付近では負曲げモーメントが作用し、コンクリート床版に引張力が生じるため、これに対する設計法が課題となっている。そこで、合成桁の模型載荷実験により曲げ性状について検討を行い、さらに試設計により各種評価法の違いについて検討した。これらの結果より、コンクリート床版のひび割れを許容した連続合成桁の設計法を提案する。



シートパイル併用型直接基礎の開発


構造物技術研究部(基礎・土構造) 主任研究員 神田政幸

 施工性、耐震性に優れた橋梁および高架橋基礎方式として、仮土留め用鋼矢板と直接基礎を組み合わせた「シートパイル基礎」を開発した。直接基礎が適用できずに杭が必要となる地盤条件(N値30未満)においても、鋼矢板による地盤の拘束効果により本基礎の適用が可能となる。また、シートパイルをフーチング製作の型枠とするため、施工性の向上や工期短縮が図れ、掘削幅縮小による建設発生土の削減も期待できるメリットを有する。



仮土留め工を利用したコンクリート擁壁の設計法


構造物技術研究部(基礎・土構造) 主任研究員 小島謙一

 現在、多くの現場で用いられている仮土留め工は、前面に本設構造物の擁壁等が施工された後は残置するか、撤去されるのが一般的である。そのため、施工期間の長期化、周辺への影響の増加、コストの増加などが問題となり、仮土留め壁の有効利用が求められている。本研究では、仮設時状態を加味した上で本設構造物としての検討を行い、仮土留め壁を利用した擁壁を構築する工法を提案した。ここでは、その設計法等について紹介する。



トンネルに対する近接施工の新しい影響評価基準


構造物技術研究部(トンネル) 副主任研究員 野城一栄

 昨今、既設トンネルに近接した造成工事が数多く施工されている。近接した盛土・切土工事によるトンネルの変形挙動については、影響要因が多岐に渡るため、影響予測の実務においては影響を過大評価あるいは過小評価することが否めなかった。このため、トンネルに近接した盛土・切土工事について、近接施工の影響の判定基準の精度の向上を目的として、事例分析や数値解析を実施し、新しいトンネルの近接度の判定基準の提案を行った。




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