第192回 鉄道総研月例発表会:車輪/レール接触問題 ―摩擦・摩耗・疲労損傷―

車輪/レールの接触問題に関する研究の現状


鉄道力学研究部 部長 鈴木 康文

 車輪/レールの接触問題は、安全、環境、快適性、保守性など多方面の課題に関連する。ここでは、車両運動特性に直結する車輪とレール間の接線力特性(摩擦、クリープ力特性、粘着、潤滑)、保守、安全、環境に特に重要となるレールの側摩耗や波状摩耗、車輪フランジ直摩、レールのシェリングやきしみ割れなどの接触疲労といった課題に関する研究について、鉄道総研における取り組みの現状、今後の課題などを紹介する。


車輪およびレールの摩擦係数測定装置


鉄道力学研究部(車両力学) 主任研究員 前橋 栄一

 車両走行直後の在姿状態車輪表面摩擦係数把握及び測定用に試作した車輪動摩擦係数測定装置μテスタについて、測定精度向上や手法の確立等の取り組みを実施してきた。本発表では測定原理・装置概要及び、追加開発した簡易測定タイプの紹介を行なう。



転削車輪フランジ部の摩擦係数測定


材料技術研究部(摩擦材料) 主任研究員 伴  巧

 急曲線区間で発生する車輪フランジ乗り上がり現象は、車輪フランジ/レールゲージコーナ接触部の摩擦係数増大が一つの要因となるが、その発現機構は十分に解明されていない。そこで、実物大の車輪/レール接触試験機を開発し、当該試験機や車輪動摩擦係数測定装置を用いて摩擦試験を実施した。ここでは、相対的に乗り上がり脱線の発生頻度が高い、表面凹凸の大きな転削後の車輪フランジに対する摩擦試験の結果について報告する。



車輪/レール摩擦緩和システム


鉄道力学研究部(軌道力学) 研究員 緒方 政照

 鉄道車両が急曲線を通過する際、車輪とレール間に発生する横圧は、内軌波状摩耗、外軌側摩耗、車輪フランジ直立摩耗およびきしり音の発生原因の1つである。横圧を低減するためには内軌頭頂面の潤滑が有効と考えられており、本報告では、曲線通過時の横圧を低減し、しかも空転・滑走を起こしにくい摩擦緩和材および車上から摩擦緩和材を供給する噴射装置など摩擦緩和システムの開発状況について紹介する。



車輪およびレールの摩耗形状予測手法


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 金  鷹

 急曲線におけるレールゲージコーナと車輪フランジの摩耗に関して、摩耗に及ぼす各種パラメータの影響を定量的に評価および予測することは、摩耗低減策の検討と保守の効率化を図る上で重要である。ここでは、車両と軌道の相互作用の面から摩耗に及ぼす影響因子とその影響度を室内摩耗試験により把握するとともに、接触応力、すべり率および硬さの変化を考慮した摩耗進みの予測式を検討した結果について報告する。



レール削正痕が接触疲労に及ぼす影響


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 陳  樺

 新幹線および在来線において、レールシェリング発生抑制などを目的として予防削正作業が行われている。一方近年、表面粗さを考慮した弾塑性解析では、粗さ突起部接触により極表層の応力状態が極めて厳しいことがわかった。本研究では、削正痕を模擬した試験ディスクを用いて、繰り返し回転による表面粗さの変化、極表層での塑性流動、硬さと結晶の整列状態(軸密度)を調査し、削正痕がき裂の起点となる疲労層の形成に与える影響度合いを検討した。



在来線におけるレールシェリング予防削正効果


材料技術研究部(摩擦材料) 主任研究員 佐藤 幸雄

 在来線レールの転がり接触疲労損傷を防止するための対策の一つとして、グラインディング車によるレール削正の有効性を材料学的観点から検討した。在来線の中でも列車本数の多い通勤線区においてレール削正試験を行い、削正前後におけるレール車輪転走面表層部の金属組織および結晶の変形状態を調べた。ここでは、金属組織の塑性流動状態およびX線逆極点測定法により結晶変形状態を評価した結果について報告する。



レール損傷の予測・評価モデル


材料技術研究部(摩擦材料) 研究室長 岩渕 研吾

 レールの保守コスト縮減方策を検討するためのツールの構築を目指して、シェリング、きしみ割れ、側摩耗という主要な損傷形態を対象としたレール損傷の予測・評価モデルの構築を現在検討している。ここではレール損傷モデルの全体構成を示すとともに、疲労の蓄積、き裂の発生、き裂の進展等、レール損傷の進行の各段階に適用すべき予測・評価モデルの基本的な考え方と、それらを連結したプロトタイプの基本構成について報告する。




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