第193回 鉄道総研月例発表会:最近の車両技術

最近の車両技術


車両構造技術研究部 部長 石塚 弘道

 現在、車両構造技術研究部、車両制御研究部および材料技術研究部において、鋭意進められている研究のうち、「セラミック製ブレーキディスク」、「超電導主変圧器の実用化技術の開発」および「ナノ材料を用いた難燃性床材の適用性評価」を取り上げ、その成果の一端を紹介する。


高速新幹線車両用軸箱オイルシール


材料技術研究部(潤滑材料) 主任研究員  中村 和夫

 新幹線の高速化に対応するため、リップ接触面のはく離発生の抑制対策等を施した軸箱オイルシールを試作した。台上回転試験の結果、車両走行距離75万km相当を高速回転させても油漏れがなく良好な状態であったことから、高速新幹線車両に適した性能を有することを確認した。



車軸軸受の内輪クリープによる損傷プロセスの検討


材料技術研究部(潤滑材料) 主任研究員  永友 貴史

 車軸軸受の内輪クリープが発生すると、車軸の摩耗により車軸と内輪間に隙間が生じ、車軸に対する内輪の相対回転速度が著大な内輪のスピン状態となり、軸受発熱から焼付きや車軸破損に至ることがある。しかし、内輪クリープによる車軸軸受の損傷プロセスは未だ解明されていない。そこで、試験装置を用いて、実物大の車軸軸受の内輪クリープ再現試験を行い、内輪クリープを起点とした車軸軸受の損傷プロセスを検討したので報告する。



走行に伴う車輪踏面形状変化とその管理手法


車両構造技術研究部(車両運動) 副主任研究員  芳賀 昭弘

 通勤電車、特急電車それぞれ複数の線区を走行する車両に対して、累積走行距離毎に車輪踏面形状を調査し、摩耗傾向を推定する「車輪摩耗形状推定ツール」を開発した。このツールにより車輪削正基準を満足しつつ、適切と考えられる車輪削正量、車輪転削周期および車輪使用限度までの累積走行距離の推定が可能となった。



アルミニウム車両構体溶接継手に対する疲労設計線の提案


車両構造技術研究部(車両強度) 主任研究員  織田 安朝

 高速車両構体はアルミニウム合金製であり、トンネル内すれ違い時の車内外圧力差に起因する繰返し負荷に耐える必要がある。しかし、その疲労強度、特に溶接継手に対する判定基準がないのが現状である。そこで、代表的な溶接継手試験体の疲労試験を実施し、得られたS-N曲線から疲労設計線を作成した。



軸ダンパの減衰制御による車両の上下振動低減


車両構造技術研究部(車両振動) 副主任研究員  菅原 能生

 最近の鉄道車両では、車体の弾性振動を抑制することが上下振動乗り心地向上に効果的である場合が多い。この振動を抑制する方策のひとつとして、鉄道車両の1次ばねの減衰要素である軸ダンパの減衰力を制御して車体の振動を抑制するシステムを開発中である。本発表では、このシステムを新幹線相当車両に組み込んで実施した車両試験台における加振試験結果を紹介し、本手法によって効果的に車体の弾性振動が低減できることを示す。



ハイブリッド車体傾斜システム


車両構造技術研究部(車両振動)  主任研究員  鴨下 庄吾

 JR北海道では在来線車両のさらなる高速化を目指し、現行の振子車両より大きな車体傾斜角を実現できる車両の開発が行われている。振子動作と空気ばねによる車体傾斜を連動させ、振子角増加に伴う車体左右変位の増大や内軌側輪重抜けの危険性を低減させたシステムである。このような複合振子システムの特徴、振子と空気ばね傾斜の協調動作を行う際の制御上の問題点や対策、並びに試験結果について報告する。



電力変換装置の制御方法改良による省エネルギー運転法


車両制御技術研究部(動力システム) 主任研究員  近藤 圭一郎

 電気車が等速走行を行う際には、部分的な主回路機器出力で運転していることが多い。このとき、編成中の一部の電力変換装置を停止させ、それ以外の電力変換装置を最大出力で動作させることで、編成全体として、出力に比例しない無負荷損失を低減することが期待できる。本発表では、このような主回路の省エネルギー制御方法を紹介するとともに、現車試験での消費エネルギーの低減効果についても述べる。




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