第196回 鉄道総研月例発表会:最近の軌道技術

安全性向上とリスク管理に向けた軌道技術開発


軌道技術研究部 部長  高井 秀之

 近年、新潟県中越地震時の新幹線列車の脱線など、従来は想定されていなかった形態の事故が発生している。軌道技術の研究開発において安全性向上は常に最優先課題であるが、それに加えてどのようなハザード(危険要因)があるかを改めて分析し、事故が防止できない場合でも被害を最小限に抑える、いわゆるリスク管理の視点を忘れてはならない。このような認識に基づいて、軌道技術の研究開発の方向性について概観する。


軌道の維持管理標準


軌道技術研究部(軌道管理) 研究室長  古川 敦

 軌道の維持管理については、鉄道技術基準省令に基づき各鉄道事業者が実施基準を定め、実施しているところであるが、本年10月、技術基準の性能規定化の方針に則って、軌道の維持管理に関する標準的な方法を定めた「維持管理標準」が制定されるとともに、検査の周期に関わる告示が改正され、国土交通省より通達された。ここでは、維持管理標準の考え方を解説するとともに、標準に基づく実施基準制定の留意点について述べる。



保守省力型ポイントガード


軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員  吉田 眞

 ポイントガードが設置されているポイント部の保守・点検作業を軽減するため、現行のポイントガードと比較して1/2の人員および時間でガードレールの移動および復旧作業が可能となる移動機構等を備えた保守省力型ポイントガードを開発した。このポイントガードは、ポイント部の保守・点検作業を軽減する他、ガードレールと床板の一体性を向上させることによりガードレール締結ボルトの折損防止を図っている。



橋上における位置調整可能な在来線用レール締結装置


軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員  若月 修

 橋上でフックボルトや橋上ガードレールが存在しても高低・通り変位整正を容易に行える、位置調整可能な在来線橋まくらぎ用レール締結装置を開発した。室内性能確認試験を実施した結果、十分な実用性があることを確認した。また、このレール締結装置を営業線に試験敷設したところ、初期の施工性に問題はなく、良好な軌道状態を確保することができた。



新しいバラスト軌道劣化モデル構築に向けての測定・解析技術


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員  相川 明

 わが国では、全軌道延長の大部分をバラスト軌道が占めており、バラスト軌道の動的な破壊挙動の解明は、軌道保守の合理化・効率化を考える上で重要な課題の1つである。本稿では、鉄道総研で現在開発中の「バラスト軌道劣化モデル」の全体像の概要を示すとともに、本モデルの構築・検証・精緻化に不可欠となる、道床加速度の三次元測定法、軌道沈下の高精度測定法、不連続体解析手法など、鉄道総研で新たに開発した測定技術、解析技術について紹介する。



各種レール継目部沈下対策工法の比較


軌道技術研究部(軌道・路盤) 主任研究員  堀池 高広

 有道床軌道では、レール継目部の衝撃荷重によって高低変位が促進されるため、有効な継目落ち対策工法の開発が強く求められている。そこで、レール継目部における新たな対策工法を提案することを目的とし各種試験を実施した。その結果、土砂混入の無いバラストにおいては、「まくらぎ弾性化工法」または「軌道パッド低ばね化」を、土砂混入バラストでは、上記2工法または「豆砕石敷込み工法」が有効であることを確認した。



有限間隔弾性支持モデルによる軌間拡大防止条件の検討


軌道技術研究部(軌道管理)  研究員  寺田 浩一郎

 軌間拡大による脱線の原因としてレール締結装置やまくらぎ等の不良が連続的に存在することが挙げられる。本件では「有限間隔弾性支持モデル」を用いて締結装置の連続不良本数とレール横変位との関係を算出し、軌間拡大を防止するためのレール締結条件を検討した。さらに本モデルを用いて、木まくらぎを部分的にPCまくらぎ化するための条件等を検討した結果を示す。



レールボンド接合部の品質検査と振動試験


軌道技術研究部(レール溶接) 研究室長  設楽 英樹

 レール継目部におけるレールボンド接合部の品質を検査するために、パルス反射式の超音波探傷法について検討した。また、レールボンドの脱落と接合状態の関係について明らかにするために、レール継目部で発生するレール応力および振動加速度を測定し、継目部で発生する振動加速度と同程度の振動を繰返し負荷する振動試験を実施した。これらの検討を踏まえ、レールボンドの脱落を防止するための品質評価法について提案する。




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