第199回 鉄道総研月例発表会:最近の車両技術

最近の車両技術


車両制御技術研究部 部長 秦   広

 鉄道総研では、信頼性の高い鉄道、利便性の高い鉄道、低コストの鉄道、環境と調和した鉄道などを目標として研究開発を進めている。本発表では、このうち車両関係の最近の成果のいくつかをトピックス的に紹介する。


電磁シールドケーブル使用による主回路の誘導障害の低減


車両制御技術研究部(駆動制御) 副主任研究員 廿日出 悟

 電磁誘導障害の中でも直達ノイズは特に対策が困難である。本発表では電磁シールドケーブルを現車主回路に適用して直達ノイズへの効果を比較した結果を報告する。試験の結果、ATS-S型地上子周波数に対し5〜10dB程度、電波雑音の8.75MHz付近に対し5dB程度のノイズ低減効果を確認できた。ノイズ対策が困難な車端部やモータ口出線などにおいては電磁シールドケーブルがノイズ低減のための有効な手法であると考えられる。



車載式通電装置による軌道短絡性能向上


車両制御技術研究部(駆動制御) 主任研究員 長田  実

 鉄道を安全に運行するための信号制御は列車の在線検知をもとに行われており、現状では在線検知の大部分が軌道回路の短絡によって実現されている。しかしながら、様々な要因のため短絡性能が低下する場合がある。
 これに対し、従来の対策に併設可能な車両側の軌道短絡性能向上策を提案し、実際の車両に適用した走行試験を行なってその効果を確認した。ここでは、本改善策の内容と試験結果について紹介する。



ディーゼル車両の消費エネルギー計算システムの開発


車両制御技術研究部(動力システム) 主任研究員 村上 浩一

 省エネ法に基づいて「自動車の燃費規制」や「特定輸送事業者への省エネ対策の義務付け」などが制定された。このような情勢を踏まえ、ディーゼル車両の省エネ対策に活用できる支援ツールとして「ディーゼル車両の消費エネルギー計算システム」を開発した。本システムは運転曲線作成ソフトの走行データを用い、機関の燃費特性などから走行に必要な燃料消費量や排気されるCO排出量を推定するソフトウェアである。



空気ばね詳細力学モデルの検討


車両構造技術研究部(車両運動) 主任研究員 下澤 一行

 空気ばねの力学のモデルとしては、ばね・ダンパによる等価線形モデルが広く使用されているが、実際の応答は空気の状態方程式および流量特性の非線形性により、等価線形モデルによる特性と異なることが知られている。空気ばねの非線形モデルを構築することを目的に空気ばねの特性試験を実施したので、その結果について報告する。



車体曲げ振動測定法と振動特性に応じた振動低減法


車両構造技術研究部(車両振動) 主任研究員 富岡 隆弘

 車体の上下方向の曲げ振動は乗り心地に影響の大きいことからその低減が求められている。著者らはこれまで車体曲げ振動の実態把握のための試験法・データ解析手法の開発、実測に基づく現象解明と数値シミュレーション手法の開発、車体曲げ振動低減技術の開発などに取組んできた。本発表では、車体の固有振動モード特性の測定法と測定結果について述べるとともに、車体曲げ振動低減に関する最近の検討例について紹介する。



車両の車端部圧縮強度特性評価


車両構造技術研究部(車両強度) 主任研究員 宇治田 寧

 車両の衝突時の挙動を評価するにあたり、車端部の圧縮変形特性を把握することが重要である。このため、軽量ステンレス車両を対象として、実物車体を用いた圧縮破壊試験を行ない、その圧縮変形特性を確認した。また試験条件を模擬したFEM解析を実施し、比較を行ったところ良い一致を見た。これらの結果を元に、マルチボディシステム解析による衝撃時の編成挙動評価を試みた。本発表では、これらの手法を用いた評価事例について紹介する。



在来線用車軸車輪座の疲労強度評価


車両構造技術研究部(車両強度) 主任研究員 佐藤 康夫

 在来線車両用焼きならし車軸の探傷の周期および方法などの適正化を図るための一資料を得る目的で、輪軸疲労試験装置を用いて実物大車軸の疲労試験を実施した。車輪座内ボス端部に発生することのあるフレッチング疲労き裂を模擬するために、当該部に加工した種々の深さの放電加工による人工きずからのき裂進展性について、破壊力学の手法を用いて評価を行ったので紹介する。




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