第201回 鉄道総研月例発表会:構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術に関する最近の研究開発


構造物技術研究部 部長 小西 真治

 構造物技術研究部では、鉄道土木構造物の設計や維持管理の実務に活用できる研究開発を進めている。「技術基準整備」、「構造物の維持管理に係わる研究開発」、「建設費節減に係わる研究開発」および「耐震設計・耐震診断に係わる研究開発」を研究開発の柱とし、また、地盤振動、構造物騒音などの「環境に係わる研究開発」にも力を注いでいる。これら構造物に係わる最近の研究開発の概要を紹介する。


地震動の継続時間が構造物の損傷程度に与える影響


構造物技術研究部(耐震構造) 研究員 野上 雄太

 鉄筋コンクリート(RC)部材は繰り返し荷重により耐力低下を起こすことは知られており、耐震設計標準では骨格モデルに反映されている。ところが、地震動の繰り返し特性の違いが構造物の耐力低下の程度に与える影響は考慮されていない。本研究は、繰り返しによる耐力低下の影響を評価できる非線形モデルを開発し、そのモデルを用いた地震応答解析を実施し、繰り返し特性の違いがRC部材の挙動に与える影響について検討したものである。



曲げ損傷を受けたRC柱の部材特性に及ぼす補修効果


構造物技術研究部(コンクリート構造) 研究員 仁平 達也

 地震により受けた曲げ損傷の程度と補修方法が及ぼす補修後のRC柱の部材特性について、実大の補修RC柱を用いた正負交番載荷試験を行い、最大荷重、初期剛性、等価粘性減衰定数、エネルギー吸収能力等に関して検討を行った。この結果をもとに、震害により損傷を受けたRC柱の効果的な補修方法選定フローを作成した。



腐食した鉄筋コンクリート部材の曲げ性状の評価


構造物技術研究部(コンクリート構造) 主任研究員 大屋戸 理明

 構造物を長期使用する際の安全性の判断に資することを目的とし、腐食した鉄筋コンクリート部材の曲げ性状について検討した。部材試験の結果から、腐食に伴う鉄筋質量の減少率以上に鉄筋強度および部材耐力が減少する場合があることを確認した。また、3Dスキャナによって腐食鉄筋の断面積分布を計測し、これを考慮した力学モデルを用いることで、部材の挙動が精度よく解析できることを明らかにした。さらに、腐食した部材の耐力について、調査レベルに応じた評価の考え方を示した。



盛土の設計に適用する降雨時安定性評価手法


構造物技術研究部(基礎・土構造) 主任研究員 小島 謙一

 盛土は降雨などによる水の浸透により強度特性が変化するため、設計にあたっては不飽和土の特性を評価し、降雨による影響を検討することが重要である。しかし、現状の盛土の設計では降雨に対して降雨浸透や不飽和特性を考慮しておらず、降雨を対象とした設計法は確立していない。本発表は盛土の設計において、浸透流解析を用いた降雨浸透評価法を検討したものであり、評価手法やモデル化、定数の設定法などについて述べる。



薬液注入による杭基礎の液状化対策


構造物技術研究部(基礎・土構造) 主任研究員 澤田 亮

 液状化地盤における杭基礎の対策工法として杭の周囲のみに薬液を注入し、液状化時の杭の発生断面力を7〜8割程度に軽減する工法を提案した。杭径と同程度の範囲に、発生断面力が卓越する杭の第1不動点付近までの注入であるため、従来の広い領域の注入に比べて非常に小規模である。また、薬液の注入程度も、注入後の地盤の一軸圧縮強度が50kN/m2程度の低強度の配合で十分な効果を発揮するので、コスト的にも優位である。



RCトンネル覆工の非線形挙動特性と耐力評価手法


構造物技術研究部(トンネル) 主任研究員 新井 泰

 変状が発生している鉄筋コンクリート(RC)構造を有する地下鉄トンネルの補強、補修の意思決定に不可欠な耐力評価手法の確立を目的として、縮尺1/30のRC覆工模型に対して天端部の1点載荷実験を行った。本発表ではその実験概要と、コンクリートと鉄筋の付着特性およびコンクリートの強度特性を考慮した非線形FEMにより、RC覆工の耐力を定量的に評価できることを示すとともに、実構造物への適用に際しての留意点を示す。



地圧により変状したトンネルの変状予測と維持管理法


構造物技術研究部(トンネル) 副主任研究員 野城 一栄

 山岳トンネルは新設による取替が困難であり、変状トンネルも将来にわたって適切に維持管理していく必要があるが、変状トンネルの維持管理法は確立されていないのが現状である。本研究では変状トンネルの維持管理法の確立を目的として、事例調査、ボーリング調査、数値解析による研究を行った。その結果、地圧により変状を生じたトンネルのシミュレーション手法を確立し、また、地山の強度と内空変位速度に基づく、変状の簡易な長期予測法を提案した。




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