第205回 鉄道総研月例発表会:最近の車両技術に関する研究開発

最近の車両技術に関する研究開発


車両構造技術研究部 部長 石塚 弘道

 現在、車両構造技術研究部、車両制御技術研究部および材料技術研究部において、鋭意進められている研究のうち、「貨物用新型緩衝器の開発」、「ステンレス製車両構体レーザ溶接部の強度評価法」、「新幹線車軸軸受の実働荷重推定法の開発」および「架線レストラムの開発」を取り上げ、その成果の一端を紹介する。


車両駆動用永久磁石同期電動機の開発


車両制御技術研究部(動力システム) 副主任研究員 近藤  稔

 鉄道車両の駆動用電動機としては誘導電動機が主に用いられているが、これよりもさらに効率の高い永久磁石同期電動機が近年自動車用等で用いられており発展が目覚しい。永久磁石同期電動機は鉄道車両駆動用としても優れた特長があり、発表者らはこれまでに永久磁石同期電動機を用いた在来線用全閉形主電動機などの開発を行ってきた。本発表ではこれらの開発や永久磁石同期電動機の特徴について紹介する。



100kW級燃料電池車両の開発


車両制御技術研究部(動力システム) 主任研究員 山本 貴光

  現在開発が進められている燃料電池は、再生可能な水素エネルギーを利用し、排気は反応時に生成した水と反応に寄与しなかった空気だけで大変クリーンな電源である。さらに変換効率が高いなどの特長を有しており、環境対策や原油などの枯渇燃料対策として注目されている。鉄道総研では、この燃料電池の鉄道車両への適用を目指し、100kW級燃料電池を試作して試験電車に搭載し、走行試験を実施した。これらの走行試験状況、結果の概要および燃費・効率について評価を行ったので報告する。



軸ダンパ・空気ばねの減衰制御による車両の上下振動低減法


車両構造技術研究部(車両振動) 主任研究員 菅原 能生

 車両の上下乗り心地に影響を与える振動の代表的なものとして、車体の1次曲げ振動および車体のピッチング・上下並進モード振動がある。これらすべての振動を効果的に低減する方策として、軸ダンパおよび空気ばねの両者の減衰制御を併用して振動低減を行う手法を開発している。本発表では、新幹線相当車両を用いて実施した車両試験台試験における加振試験結果について紹介し、本手法が効果的に振動を低減できることを示す。



鉄道車両用HILSシステムの開発状況


車両構造技術研究部(車両振動) 主任研究員 佐々木君章

 評価対象のハードウェアとコンピュータを連携し、リアルタイムシミュレーションの一部として実物を駆動する評価方法をHILS(Hardware In the Loop Simulation)という。HILSは走行状態を模擬した試験を実物で行えることから、費用と時間のかかる走行試験の大部分を置き換え、車両開発を効率化するツールとして期待される。鉄道総研では車両試験台を包含する大規模なHILSシステムの開発を進めており、この全体計画と現在の開発状況について述べる。



車両用ダンパ試験装置の開発


車両構造技術研究部(走り装置) 副主任研究員 渡辺 信行

 仮想走行試験環境を作る研究の一環として、ダンパ試験装置を開発した。この試験装置は鉄道車両で用いられている任意のダンパを実際の走行条件と同様に3次元に動作させて、そのときの発生力を6分力計で計測できる装置である。この試験装置を用いて、シミュレーションとリアルタイムに連動させたHILS試験と、ダンパ特性の自動同定試験を試みてきた。これらの概要とその試験結果を報告する。



車輪踏面熱き裂および踏面凹摩耗発生メカニズム


材料技術研究部(摩擦材料) 研究室長 岩渕 研吾

 走車輪踏面熱き裂は多くの車種で問題となっているが、ベンチ試験で発生した例がなく抜本的な対策の策定が困難であった。レール/車輪の転動と制輪子による摩擦入熱を模擬した条件でベンチ試験を行い、その生成に影響する因子について検証した。非常ブレーキ相当の連続負荷により車輪踏面熱き裂の再現生成に成功し、これに影響する負荷因子を抽出した。また車輪踏面凹摩耗の発生メカニズムについての知見が得られた。



CFRP製タワミ板の非破壊検査法


車両構造技術研究部(車両強度) 副主任研究員 牧野 一成

 電車の主電動機と小歯車間のトルクを伝達する継手には,近年CFRP製のタワミ板が使用されているが,現行の保守基準では外観や寸法に関する規定しかなく,FRP特有の層間はく離等の内部損傷を検出できる合理的な非破壊検査法が求められている。本発表では,タワミ板の非破壊検査法として軟X線法および水浸超音波探傷法に注目し,それらの有効性や検修作業への適用性についての検討結果を報告する。




第205回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 2007 Railway Technical Research Institute