第206回 鉄道総研月例発表会:輸送情報に関する最近の研究開発

最近の輸送情報技術の研究開発

輸送情報技術研究部 部長 後藤 浩一

 輸送情報技術に関する研究開発では、サイバーレールの概念を具体的な技術として実現することを重要課題と考え、現在、「動的デマンド推定に基づく輸送計画の効率化」、「鉄道における高速大容量情報通信技術の開発」、「設備管理業務へのセンシング技術・ITの適用」の3つの大きな研究テーマに取り組んでいる。本発表ではこれらを中心に最近の研究成果の概要を報告する。


列車ダイヤの頑健性評価手法の開発

輸送情報技術研究部(運転システム)研究員 武内 陽子

 頑健な列車ダイヤとは、予想以上の乗客の集中や駆け込み乗車等によって列車運行に些細な乱れが生じても、安定した輸送サービスを提供できる列車ダイヤである。複数列車を乗り継いで移動する旅客にとっては、些細な列車遅延であっても、予定していた接続先列車に乗れずに大きな不便を感じることがある。本研究では、旅客の利便性に基づく頑健性評価指標を提案し、列車運行シミュレータを用いて頑健性評価指標を算出する手法について報告する。


運転整理ダイヤ案に対する乗務員運用の難易度評価手法

輸送情報技術研究部(運転システム) 主任研究員 坂口  隆

   鉄道では輸送障害に対し、ダイヤを平常に戻すため最初に運転整理ダイヤを作成し、次にこれを運行するための乗務員運用整理を行う。しかし最初の段階で乗務員運用がほとんど考慮できないため、乗務員運用整理が困難な運転整理ダイヤが作成される恐れがある。この問題を解消するため、運転整理ダイヤ案に対して乗務員運用整理の困難さを判定する手法を開発したので、その概要と本手法を用いた運転整理ダイヤ作成の模擬実験の結果を報告する。


運転再開時の旅客数予測手法の開発

輸送情報技術研究部(交通計画) 研究室長 武藤 雅威

 人身事故などで運転中断に遭遇した鉄道利用者は、他経路へ迂回するなど、平常時とは異なる交通行動を取らざるを得ない。本研究では、そのような利用者行動とその意思決定要因を把握するため、webアンケート調査を実施し、迂回行動と急ぎ具合との関係などの特性を分析した。さらに、「経路迂回」か「運転再開を待つ」かの行動選択に着目し、その選択モデルを構築して、より良い運転整理案ダイヤ作成に向け、運転再開時の旅客数を予測する手法を考案した。


事故報告支援システムの開発

輸送情報技術研究部(設備システム) 主任研究員 佐藤 紀生

 事故時に現場から直接指令又は区所へ事故情報を速やかに報告するための、事故報告支援システムを開発した。このシステムでは、事故発生時に音声メモによる事故概要、現場写真、手書き略図を現場から直接送付できるため、即時に事故状況の詳細な把握が可能となり、迅速な事故復旧を行うことが可能となる。本発表では、開発した事故報告支援システムの概要と、現場評価を考慮した今後の課題について報告する。


駅構内作業計画作成システムの開発

輸送情報技術研究部(運転システム) 研究室長 福村 直登

 現在,ベテラン担当者が紙面上で行っている駅構内作業計画作成業務を,パソコンによって支援するシステムを開発した。本システムは,計画表示画面,計画を作成するための各種操作機能と帳票出力機能,及び,計画作成そのものをサポートする計画自動作成アルゴリズムから構成される。本発表では計画自動作成アルゴリズムを中心に,本システムの概要を述べる。


車載式自動改札機を活用した閑散線区向け出改札システム

輸送情報技術研究部(旅客システム) 副主任研究員 明星 秀一

 鉄軌道事業者がICカード乗車券システムを導入する際、一般的に利用者の多い駅では扉のある自動改札機を、閑散駅では扉のない簡易改札機を設置することが多い。しかし、簡易改札機の設置は運賃捕脱のリスクを残しており、必ずしも導入効果が期待できない場合がある。本発表では、閑散線区における運賃捕脱のリスクについて検討をするとともに、そのリスクを軽減できる車載式自動改札機を活用した簡易な出改札システムを提案する。


視覚障害者向け情報提供システムの実証的評価

人間科学研究部(人間工学) 主任研究員 水上 直樹

 視覚障害者向け情報提供システムについて、神戸地区および東京地区で、評価試験を実施した。出発駅から目的駅までの連続した利用におけるシステムの有効性や、長期的に利用してもらった場合のシステム利用の習熟性などを中心に検証した。その結果、案内に関するニーズが、利用者属性により大きく異なるものの本システムが有効に機能すること、また、鉄道に慣れていない利用者でも、数回の利用でシステム利用法が習得できることなどが明らかになった。



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