第214回 鉄道総研月例発表会:防災技術に関する最近の研究開発

防災技術に関する研究開発

防災技術研究部 部長 木谷 日出男

鉄道沿線で発生する多様な形態の災害に対する危険度評価、対策工の設計、状態監視技術、運転規制基準の評価および警報システム等の研究開発は、鉄道の安全と安定輸送の根幹を担う技術項目である。ここでは、鉄道総研が取り組んでいる防災技術に関する研究開発成果の中から最近の話題を紹介するとともに、今後の展望について解説する。


統計的手法による河川橋脚基礎の洗掘要注意橋りょう抽出手法

防災技術研究部(地盤防災)主任研究員 佐溝 昌彦

河川増水時の洗掘に伴う橋りょう被害を防止するためには、洗掘災害の発生が懸念される橋りょうを的確に抽出し、必要な措置を適宜講じる必要がある。しかし、これまで合理的な手法は提案されておらず、もっぱら現場技術者の判断にゆだねられていた。そこで、鉄道事業者が実施する構造物の検査での活用を想定して開発した、統計的手法による洗掘要注意橋りょうの抽出手法を紹介する。


降雨による盛土崩壊の形態と規模の予測方法

防災技術研究部(地盤防災) 副主任研究員 布川  修

降雨時に鉄道沿線における盛土では、列車の運行を支障する重大な被害や、支障するに至らない軽微な被害など、様々な形状や規模の崩壊が発生することがある。こうした種々の被害に対して有効な対策を計画するため、過去に降雨により鉄道沿線で発生した盛土崩壊データを統計的に分析し、盛土の崩壊形状や規模を予測する方法について検討した結果を紹介する。


斜面の降雨被害発生確率による防災投資の意思決定支援手法の研究

防災技術研究部(地盤防災) 研究室長 杉山 友康

降雨時に発生する斜面災害に対して、斜面崩壊の危険度のみならず線区特性(旅客数、列車本数等)を考慮した定量的な評価を行うことでより効率的、効果的に対策の順序等を決定することが可能となる。そこで、斜面崩壊による被害をイベントツリー形式で設定し、年間被害発生確率と被害損失からリスクを算定し、防災投資の意思決定を支援する手法を開発したので報告する。


泥岩掘削残土からの酸性水・有害元素溶出持続性評価

防災技術研究部(地質) 研究室長 太田 岳洋

平成15年の土壌汚染対策法施行以降、一般的な自然の地盤材料からなる掘削残土に対しても同法に準拠した対策が求められている。泥岩掘削残土は有害元素含有量が低く、かつ溶出も早いため、高価な残土処分を行わずに自然に流水を浸透させることで、有害元素等を除去することが可能である。ここでは、泥岩から有害元素を含む酸性水が溶出する時間を推定する手法を検討した結果を紹介する。


列車が運転規制区間を走行中に強風に遭遇する確率の評価方法

防災技術研究部(気象防災) 研究室長 今井 俊昭

強風時の運転規制において、規制風速値や規制継続時間は安全性を左右する重要な要素となる。より適切な強風時の運転規制方法を検討するため、鉄道沿線の風観測データを用いて、規制区間に進入した列車が区間を規制速度で通過するまでの数分間に限界値以上の強風が発生する確率を評価するモデルを作成した。この強風発生確率を仮想的な規制区間に当てはめた場合に、列車が強風に遭遇する確率を評価する試みを紹介する。


衛星放送を利用した列車搭載可能な緊急地震速報受信装置の開発

防災技術研究部(地震防災) 研究室長 芦谷 公稔

走行中の列車へ緊急情報を伝達する手段が不十分な路線においては、列車自らが緊急地震速報を直接受信し、GPSによる位置情報を併用して地震の影響を個別に判断し、運転制御することができれば、低コストで緊急地震速報を有効活用できる。本発表では衛星放送による緊急地震速報を列車で直接受信する装置を試作し、営業列車で検証試験を行った結果について報告する。



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