第218回 鉄道総研月例発表会:構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術研究部 部長 舘山  勝

構造物に関する研究開発においては、実務で活用できる研究成果を挙げることを目標に、「技術基準整備」および「構造物の維持管理」、「建設費節減」、「耐震設計・耐震診断」、「環境」に係わる研究開発を進めている。これらのうち、「技術基準整備」、「構造物の維持管理」および「耐震設計・耐震診断」に関する最近の研究開発の概要について紹介する。


レーザー超音波法を用いたコンクリート内部欠陥診断システムの開発

構造物技術研究部(基礎・土構造)副主任研究員 篠田 昌弘

近年、トンネル覆工コンクリートの剥落などを防止するため、適切な維持管理を行う必要性が高まってきている。そこで、パルス幅や波長等を変化させた加振レーザーパルスを用いて、コンクリート内部の欠陥状態を把握することを試み、欠陥に関するデータベースを構築し、検出アルゴリズムを作製した。ここでは、その内容について紹介する。


トンネル健全度診断システムの開発

構造物技術研究部(トンネル) 主任研究員 岡野 法之

近年、トンネルの検査データの電子化やデータベース化が進みつつあるが、健全度判定は依然として手作業で行われている。そこで、トンネル変状展開図から、各健全度や対策工の提示を行うシステムについて取り組んだ。そして、覆工コンクリートの剥落や力学的安定性等に対する健全度を判定し、さらに、変状展開図や内空変位速度、地形、地質データなどから原因推定を行い、対策工を提示するシステムを開発した。ここではこのシステムの内容について紹介する。


磁歪センサーを用いた高架橋の鉄筋応力モニタリング

鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 曽我部 正道

既設RC構造物の健全度を評価する際に、コンクリート部材内部の鉄筋に加わっている応力を推定することが重要である。そこで、透磁率の変化を利用して鉄筋の応力を計測する磁歪センサーの適用について検討した。そして、透磁率の変化が鋼材の製造ロット、製造会社、地域、節形状、周辺の鉄筋および温度に及ぼす影響を明らかにした。さらに、RC高架橋の配筋に適合した2種類の磁歪センサーを開発し、実構造物に設置して鉄筋応力のモニタリングに適用できることを検証した。ここではその内容について紹介する。


既設鋼橋の合成構造化によるリニューアル技術

構造物技術研究部(鋼・複合構造物) 研究室長 杉本一朗

土木構造物の経年が増すにつれて、維持管理に関する課題が問題視されている。特に鋼鉄道橋は古くから架けられている橋が多く、腐食や疲労に対する維持管理が大きな課題となっている。そこで、本研究では、できるだけ簡易な補強で鋼鉄道橋の耐荷力、耐久性を向上させることを目的として、既設の鋼桁の上フランジ面にコンクリート床版を設置する手法に関して取り組んできた。その結果、新たなリニューアル技術を開発したのでその内容について紹介する。


低土被り山岳トンネルの地震時の挙動の予測法

構造物技術研究部(トンネル) 副主任研究員 野城 一栄

近年、未固結な地山からなる小土被り地山においても、山岳トンネルが採用される事例が増えている。そこで、本研究では、低土被り山岳トンネルを対象として、事例収集・分析、模型実験を行い、地震時の挙動や、変形・破壊挙動に与える構造欠陥の影響を明らかにした。さらに、無筋コンクリートの破壊を考慮できるトンネルの地震時挙動の予測手法を開発し、地震被害の予測解析を行ったのでその内容について紹介する。


高架橋に付帯する旅客上家の地震応答特性と耐震設計法

構造物技術研究部(建築) 副主任研究員 山田 聖治

高架橋の上部に付帯する旅客上家は、高架橋と連成した振動挙動を示し、地震時の応答は高架橋に対し増幅する。そこで、常時微動測定により高架橋−旅客上家連成系の振動性状を把握するとともに、地震応答解析により上家の構造特性の違いが応答性状に及ぼす影響を明らかにした。さらに、応答特性を考慮した設計用地震動の設定方法を提案し、旅客上家に対する新たな耐震設計法としてまとめたのでその内容を紹介する。


支承部のモデル化方法の提案と橋梁全体系の動的解析

構造物技術研究部(耐震構造) 主任研究員 岡本  大

コンクリート鉄道橋の支承構造の一部である移動制限装置には、鋼角ストッパーが用いられる場合が多いが、耐震上の解析における具体的なモデル化の方法は定められていない。そこで、本研究では、交番載荷試験に基づいて鋼角ストッパーの非線形モデルを新たに提案した。そして、この鋼角ストッパーと支承部のモデルを組み入れた橋梁全体系について、動的解析を実施し新たな知見を得た。ここではこれらの内容について紹介する。



第218回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ
Copyright(c) 2008 Railway Technical Research Institute