第224回 鉄道総研月例発表会:軌道技術に関する最近の研究開発

性能照査型設計に基づく軌道技術の新たな体系

軌道技術研究部長 石田 誠

鉄道技術の発展において、経験は重要な判断基準である。特に軌道技術のような保守を中心とする技術は、鉄道開業以来の長い経験によって体系化されてきた。一方、現在バラスト軌道および直結系軌道の軌道構造設計標準が制定されようとしているが、その中では、性能照査型設計という観点から、軌道技術の体系が見直されている。ここでは、設計標準が目指す新たな軌道技術の体系について紹介する。


実物大軌道模型試験によるバラスト軌道沈下量予測モデルの提案

軌道技術研究部 軌道管理 研究室長 古川敦

バラスト軌道は列車の繰り返し走行によって漸進的に沈下する。この沈下量を予測する方法は「軌道破壊理論」と呼ばれ、古くから様々なモデルが提案されてきた。今回、特にバラスト層の厚さと路盤剛性に着目して実物大軌道模型を用いた繰り返し載荷試験を行い、従来の理論と矛盾せず、かつバラスト層の厚さによる軌道沈下量の違いを説明できる新たなモデルを導出した。本報告ではこのモデルの概要と、従来モデルおよび実測された高低変位との比較結果を紹介する。


軸箱加速度と軌道変位を用いた輪重・横圧の予測と管理法の提案

軌道技術研究部 軌道管理  研究員 田中博文

短い波長の軌道変位に起因して発生する著大な輪重や横圧の適切な管理法が求められているが,10m弦正矢法による軌道検測ではこのような軌道変位の管理は困難である.一方で,軸箱加速度は短い波長の輪重・横圧変動と相関が高いことが知られている.そこで,本研究では,輪重・横圧と軸箱加速度,軌道変位の周波数分析を行い,この両者を用いて輪重・横圧変動を予測する手法を考案した.ここでは,この予測法の概要および実測値との比較結果、さらにこれを用いた著大輪重・横圧の管理法を提案する.


無線センサネットワークを用いた軌道変位常時監視システムの開発

軌道技術研究部 軌道・路盤  主任研究員 村本勝己

軌道の変位を常時監視するシステムは,線路近接工事のモニタリングのみならず防災対策という観点からも潜在的な需要が大きい.こういったシステムは,すでにいくつかの方式で実用化されているが,コストや使用性の問題から適用が難しい現場も少なくない.本発表では,鉄道総研で開発中の無線センサネットワークを用いた低コストな軌道変位常時監視システムについて紹介し,その実証試験の結果と今後の展望について報告する.


レール折損時における応急処置後の徐行速度向上に関する研究

軌道技術研究部 軌道構造  主任研究員 片岡宏夫

レール折損時に応急処置を施した場合の列車の徐行速度は経験的に決められており、鉄道事業者間で異なっている。そこで、安田式横裂用応急処置器取り付け時の静的載荷試験・実車走行試験、および補強継目板取り付け時の静的載荷試験を実施し、走行安全性および軌道部材の強度について検討した。その結果、それらの応急処置を施した場合に曲線半径500m以上のロングレール区間において、最大70km/h までの徐行速度向上が可能であることを確認したので報告する。


耐摩耗トングレールの開発

軌道技術研究部 軌道構造  研究室長 吉田 眞

新幹線・在来線ともに、分岐線側の通過列車が多いポイント部では、トングレールの摩耗が著しく交換周期が短い。このため、耐摩耗性に優れた耐摩耗トングレールを開発した。この耐摩耗トングレールは、これまで用いられてきたレールの材質を変更すると伴に、トングレールに適した熱処理方法を考案し耐摩耗性能を向上している。本発表では、開発した耐摩耗トングレールおよび現地試験結果ついて報告する。


レールきしみ割れの発生寿命予測

鉄道力学研究部 軌道力学  研究員 松田 博之

鉄道総研では、レールの保守コスト縮減方策を検討するためのツールの構築を目指して、シェリング、きしみ割れ、側摩耗という主要な損傷形態を対象に、その発生および進展を予測・評価するレール損傷モデルを開発している。ここでは、その中できしみ割れの発生寿命予測モデルを取り上げ、モデルの概要および実測値との比較結果について紹介する。


レール頭部横裂検知のための超音波探傷技術

軌道技術研究部 レール溶接  副主任研究員 寺下 善弘

最近、頭部全断面熱処理レールのゲージコーナ上部にき裂および剥離の発生が多く認められている。これらのき裂は連続的に発生しているため、レール探傷車による傷検知区間が数百mに達する場合がある。このような区間ではシェリングと同様に水平裂が存在するため、折損に繋がる横裂の検出が困難となっている。本発表では、シェリングおよびゲージコーナき裂から進展した横裂を検出するための超音波探傷技術について報告する。



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