第241回 鉄道総研月例発表会:構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術研究部 部長 舘山勝

鉄道総研では構造物技術に関して、技術基準の性能規定化に伴う性能評価法、東海・東南海地震のような巨大地震に対するリスク軽減法、老朽化が進む既設構造物の診断・延命化技術などに関する研究開発に取り組んでいる。ここでは、このような構造物に関する研究開発の中から最近の話題を紹介するとともに、今後の動向について展望する。


アーチ型鋼材を用いたラーメン高架橋の梁補強工法

コンクリート構造 研究室長 谷村幸裕

都市部のラーメン高架橋においては、建設から多くの歳月が経過しているため、耐久性や耐震性の観点から梁補強が必要となる場合がある。そこで、ラーメン高架橋の梁を対象にアーチ型鋼材を用いた効果的な補強工法を開発した。本開発では、補強した梁を模擬した試験体による載荷試験を行い、曲げおよびせん断力に対する補強効果を検討し、補強設計法を提案した。また、実物大の梁を補強した試験体による載荷試験を行い、所定の補強効果を有することを確認した。さらに、本工法の設計、施工に関する指針を作成した。ここではそれらの内容について紹介する。


ピボット支承を有する旧式鋼橋の耐震評価法および補強法

鋼・複合構造 主任研究員 池田 学

都市内の旧式鋼構造物は、幹線道路や鉄道と交差する箇所に多く用いられ、大規模地震時の安全性確保は重要である。このような構造物にはピボット支承(鋼製の凹凸球面を組合せた支承)が多く用いられ、その大規模地震時の評価法が不明であった。そこで、ピボット支承の交番載荷試験を行いその耐力・変形性能の評価法、およびこれを用いた大規模地震に対する耐震評価法を提案した。さらに、代表的な構造物について時刻歴応答解析を行い、各種補強法の提案とその定量的な効果を明らかにしたので、それらの内容を発表する。


線路上空建築物の方杖型制振ダンパによる耐震補強効果

建築 副主任研究員 山田聖治

線路上空建築物では、列車運行や旅客流動を支障する耐震壁等を線路階に配置することが困難な一方、十分な耐震性を持たせる必要があるため、有用な耐震補強法を整備しておくことが重要となる。そこで、線路階の隅角部に方杖型制振ダンパを設置する耐震補強法を提案し、補強効果を検討するため大型振動台を用いた動的加振実験や実構造物を想定した解析的検討を実施し、応答性状の把握や動特性の変動(付加減衰量)等の評価を行った。ここでは以上の検討から得られた知見について発表する。


負剛性摩擦支承による制振設計法

耐震構造 副主任研究員 豊岡亮洋

本研究では支承部に設置する新しい制振装置として、負剛性摩擦支承と称する装置を開発した。負剛性摩擦支承とは変形が増大すると負の剛性を発揮する装置であり、免震支承と併用することで支承部全体の剛性を低減させ、地震時の構造物被害に関係する絶対加速度応答を免震支承単独の場合よりも更に低減させることが可能である。こうした制振効果を、本装置とゴム支承を組み合わせた支承部を対象とした振動台載荷実験により確認した。また、本実験および数値解析結果をもとに、本装置を用いた制振設計法を提案したので紹介する。


開削工事における地下水流動阻害の評価法

基礎・土構造 研究員 松丸貴樹

鉄道構造物の地下化における開削工事では、地下水の流れを遮断し周辺に対して地下水環境の変化や地盤変状などの影響を及ぼすことがあるため、その評価が重要となる。そこで、3次元浸透流解析手法により開削工事の施工を考慮した周辺地盤に対する影響度評価手法を提案した。本報告では、影響度評価手法の概要を示すとともに、特に重要となる地盤の透水係数の設定法や、対策工のモデル化などについて、実際の現場における検証・評価事例を用いて紹介する。


斜杭基礎の鉄道高架橋への適用性

基礎・土構造 研究室長 神田政幸

斜杭基礎は、一般的に同規模の直杭基礎に比べて水平抵抗が大きく、地震時の構造物水平変位量を小さくできる。したがって、斜杭基礎を鉄道高架橋基礎に適用することで、地震時の列車走行安全性や構造物の耐震性の向上が期待できるため、杭・柱部材の大径化を回避でき、コストダウンに繋がる可能性がある。本報告では、斜杭基礎の数値解析結果、振動実験結果から鉄道高架橋への適用性を紹介する。なお、本成果は現在改訂中の鉄道構造物等設計標準(基礎構造物)に導入予定である。


エレメント推進・けん引工法の緩み土圧算定法

トンネル 主任研究員 岡野法之

複数の小口径角形鋼管を連続的にけん引・推進し、トンネル覆工を地盤内に構築した後に内空を掘削する「エレメント推進・けん引工法」は安全性等の利点から、地下深い箇所への利用が検討されつつある。そこで、本研究では、模型実験で計測した土圧より、現行の土圧算定法では考慮していない連続掘進が土圧に与える影響を解明し、設計に用いる新たな緩み土圧算定法を提案した。さらに、本算定法の妥当性を粒状要素法で検証するとともに、現行の土圧算定法と比較したので、その内容について紹介する。



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