第246回 鉄道総研月例発表会:電力技術に関する最近の研究開発

電力技術に関する最近の研究開発

電力技術研究部 部長 奥井 明伸

電力技術の発展に寄与する最近の鉄道総研の研究開発の概要を「電力」、「電車線」および「パンタグラフ」の観点から紹介する。また、最近の研究開発の話題として2010年から重点的に実施している「電力の新供給システム」の計画について紹介する。


直流き電ケーブルの地絡検出手法

き電 主任研究員 重枝 秀紀

直流き電ケーブルは、その構造上金属の遮へい層が無いため、絶縁破壊などの故障が発生した場合には支持構造物に大きな故障電流が流れて設備を焼損させるなどの被害をもたらす可能性がある。このため、直流き電設備の信頼性向上を目的として、布設から10年程度経過した直流き電ケーブルの劣化傾向を調査するとともに、ケーブルに絶縁破壊が発生した場合に、ケーブルの支持部においてそれを検出する装置を製作し、原理的な確認を行ったので報告する。


交流き電用避雷器劣化管理手法の適正化

き電 副主任研究員 森本 大観

交流き電回線用避雷器の劣化管理は、現在、カウンタの動作回数および漏れ電流値で行っているが、正確な漏れ電流測定が困難であることに加え新幹線では切替開閉器サージ電圧による小電流放電でカウンタが動作することがあることから、適正な劣化管理手法が求められている。そこで既設カウンタの動作を適正化するとともに、漏れ電流波形の測定が可能な装置を考案・試作し、漏れ電流波形から避雷器の劣化診断に有効な抵抗分電流の検出が可能であることを確認したので報告する。


重腐食環境用ハンガイヤーの開発

集電管理 主任研究員 片山 信一

電車線設備でハンガイヤー等に多用されるアルミニウム青銅は、成分がJIS規格における許容幅の範囲内で変化した場合でも耐食性が変化することが、これまでの腐食事例調査や基礎試験からわかっている。そこで、規格の範囲内でニッケル量を多く調整したアルミニウム青銅でハンガイヤーを試作し、耐食性およびその他の基本的性能を調べた。その結果、ハンガイヤーの基本的な性能には問題はなく、重塩害地域および塩害と温泉環境が重複する地域で行った現地試験においては耐食性が向上していることを確認したので報告する。


レインフロー法による硬銅トロリ線疲労寿命推定

集電管理 副主任研究員 山下 主税

材料の疲労試験は一般に正弦波加振で行われるが、実際の装置や設備に発生する応力あるいはひずみ波形(実働波形)は単純でない。そこで、実働波形における疲労寿命推定のための波形カウント法として提案されているレインフロー法について、硬銅トロリ線への適用可能性を検証するための疲労試験を行った。その結果、レインフロー法により得られた推定疲労寿命は加振試験による疲労寿命より概ね短く、推定が安全側であることを確認したので報告する。


銅架台剛体電車線における1パンタグラフ走行対策

電車線構造 副主任研究員 早坂 高雅

剛体電車線区間においては、一般に車両は円滑な集電の妨げとなる離線を防止するため、1ユニットに2つのパンタグラフを設け、それらを母線で引き通す等の対策がとられている。しかしながら、その状態でカテナリ電車線区間を走行すると押し上げ量が大きくなることから、一部の車両では1パンタグラフを下げる必要があり、運転取り扱い等の面で煩雑になる。そこで、銅架台剛体電車線区間において1パンタグラフ走行を可能にする離線低減対策として、剛体電車線の凹凸低減(たわみ低減)部材付加やパンタグラフの追随振幅特性の改善が有効であることを提案し、その効果を所内走行試験により確認したので報告する。


支持点近傍におけるトロリ線局部摩耗低減対策

電車線構造 研究室長 清水 政利

電車線の支持点近傍では、トロリ線の局部的な摩耗が進行しやすい傾向があり、保守コスト低減のために改善が望まれている。これらの一因として曲線引金具等によるトロリ線の局所的な引き上がりや支持点高さの不整によるパンタグラフの過大な接触力の発生が考えられる。そこで、トロリ線の引き上がりを従来の60%程度に低減できる新型金具と高さの調整機構を備えた新しい支持構造を開発し、営業線において局部摩耗低減効果を検証したので報告する。


トロリ線の振動測定によるすり板段付摩耗の検出

集電力学 主任研究員 臼田 隆之

すり板に段付摩耗が形成されると架線・パンタグラフの安定した集電を阻害する可能性がある。その対策として、すり板異常モニタリング手法の検討を行い、架線側に取付けた加速度計などの信号によって、しゅう動走行するパンタグラフの中から段付摩耗のあるパンタグラフを検知することが可能であることを検証したので報告する。



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