第249回 鉄道総研月例発表会:軌道技術に関する最近の研究開発

軌道に関する国際規格の動向

軌道技術研究部 部長 古川 敦

日本の鉄道技術を海外に輸出する際には、輸出先の国内規格または国際規格に則った性能が求められる。特に軌道は車両を直接支持・案内する構造体であるため、強度や物性のみならず、車両の走行安全性や維持管理に関する規格も満たすものとする必要がある。ここでは軌道、および軌道と車両の相互作用に関する国際規格の動向と、日本の規格との比較について解説する。


実験的研究によるレール傷の進展速度の推定

軌道技術研究部 軌道構造研究室 研究員 細田 充

レール傷の進展速度を把握することはレールの適切な管理を行う上で重要である。そこで、本研究では、頭部横裂および継目穴き裂を有するレールの室内き裂進展試験を行い、荷重やレール軸力に対する進展速度を実験的に求めた。その結果、実験結果のばらつきを考慮したき裂進展速度を把握することができ、頭部横裂や継目穴き裂に対する精度の高い進展速度の推定方法を構築することが可能となった。ここでは室内試験の概要とき裂進展速度推定方法について報告する。


曲線部における線ばね形レール締結装置の適用区分

軌道技術研究部 軌道構造研究室 副主任研究員 弟子丸 将

近年、従来広く用いられてきた板ばね形レール締結装置に代わり、保守労力やコスト低減を目的として線ばね形レール締結装置が多く使用されるようになっているが、曲線部において線ばね形クリップの折損事象が確認されている。ここでは、鉄道事業者で採用実績の多いタイプの線ばね形クリップについて折損原因を調査し、その折損対策を提案すると共に曲線部における線ばね形レール締結装置の適用区分を提案したので結果を報告する。


短繊維補強コンクリートの直結系軌道への適用

軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 副主任研究員 高橋 貴蔵

鉄筋コンクリート製の軌道構造では、コンクリートの補強に用いる鉄筋の配筋作業に多くの時間を要したり、鉄筋が軌道回路の電気絶縁性を低下させたりするといった課題があった。そこで、鉄筋を必要としない短繊維補強コンクリートのフレッシュ性状および強度・変形特性等を検討し、軌道スラブやコンクリート路盤等の直結系軌道への適用性を図るために施工性および耐力確認試験を実施した。ここでは、これらの結果について報告する。


軌道構造境界部の浮まくらぎ防止対策

軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 研究員 櫻井 祐

塑性変形がほとんど生じない連接軌道と、塑性変形が避けられないバラスト軌道との境界部では、局所的な道床沈下に伴って浮まくらぎが発生しやすい。このような軌道構造境界部の沈下対策として、浮まくらぎの発生を防止する自動沈下補正まくらぎの開発に取り組んでいる。ここでは、実物大模型試験による軌道構造境界部の沈下対策効果の検証結果について報告する。


レールガス圧接における信頼性向上手法

軌道技術研究部 レール溶接研究室 主任研究員 山本 隆一

ガス圧接法は主要なレール溶接方法として適用されているが、接合作業に不備があると接合界面に接合阻害因子である酸化物が多量に残存し、実用上問題となる欠陥が発生する場合がある。このような背景の下、欠陥発生に対する施工上の安全マージン増大を達成する目的で、酸化物を効果的に低減し得る加熱・加圧パターンについての検討を実施してきた。ここでは、その取り組み、検討過程で実施したガス圧接試験、および安全マージン増大のために提案した加熱・加圧パターンについて報告する。


ロングレール交換箇所における車体左右動の実態調査とその対策

軌道技術研究部 軌道管理研究室 研究員 木村 寛淳

新幹線のロングレール区間でレール部分交換を行うと、新旧レール接続箇所で頭部断面形状のわずかな差異によって車輪・レールの接触箇所が変動し、大きな左右動が発生することがある。本研究では、レール交換日から定期的にレール頭部断面形状と左右動を測定し、レール交換日からの経過日数と左右動との関係と、車輪転削後の踏面形状の変化とを合わせて調査した。ここでは、その調査結果とともに、これらを踏まえた左右動対策の検討結果について報告する。


曲線内側レールへの摩擦緩和材の効果的散布方法

材料技術研究部 摩擦材料研究室 研究員 深貝 晋也

急曲線区間を走行する車両の車輪踏面と曲線内側レールの車輪走行面(以下、「内軌走行面」という。)との間に生じる、激しい摩擦に起因するきしり音の防止には、内軌走行面の潤滑が有効である。ここでは、内軌走行面用潤滑剤の一種である摩擦緩和材に関する最新の開発状況と、緩和材散布のタイミングや使用量の適正化のために行った簡易計算モデルによる緩和材の延び性、効果持続性の検討結果について報告する。



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