第253回 鉄道総研月例発表会:浮上式鉄道とその技術の応用に関する最近の研究開発

浮上式鉄道とその技術の応用に関する最近の研究開発

浮上式鉄道技術研究部 部長 岩松 勝

平成19年度以降、浮上式鉄道に関する研究開発としては、車両運動シミュレーション、高温超電導材料の適用研究や地上コイルの基礎研究等を行っている。一方で、超電導技術やリニアモータ技術を在来方式鉄道へ応用するものとして、蓄エネルギ装置やレールブレーキの研究も行っており、これらの開発状況について紹介する。


模型装置による浮上式車両運動の検証

浮上式鉄道技術研究部 電磁力応用研究室 主任研究員 星野 宏則

鉄道車両の運動特性の把握は乗り心地や振動制御を考える上で重要である。在来方式鉄道では走行試験の他に軌条輪試験を行い、走行試験で実施困難な事象を検証している。超電導磁気浮上式鉄道の場合、ガイドウェイと台車の間には複雑な電磁力が働くため、定置での走行状態の再現には工夫が必要である。本発表では、超電導磁気浮上式鉄道車両の運動を再現する模型装置の仕組みを在来方式鉄道の模型装置と比較しながら説明し、振動制御効果の検証試験結果等を紹介する。


次世代高温超電導線材を用いた小型超電導磁石の開発

浮上式鉄道技術研究部 低温システム研究室 主任研究員 小方 正文

高温超電導線材は従来のニオブチタン線材よりも高い温度で使用するため、小型軽量化、構造の簡素化を実現できる。しかしこれまでのビスマス系線材では、磁場中の通電性能が低い等の問題があった。最近次世代線材とよばれるイットリウム系の開発がすすめられてきており、これを用いてコイルを製作し、長時間保冷が可能な断熱容器に収納した小型の超電導磁石を試作した。その結果、励磁電源と冷凍機を切り離しても1テスラ級の磁場を長時間にわたり維持できる性能を確認したので紹介する。


表面衝撃強度を向上した地上コイルの開発

浮上式鉄道技術研究部 電磁路技術研究室 主任研究員 高橋 紀之

浮上式鉄道用の地上コイルは、ガイドウェイ上に敷設され、直近を車両が高速通過するため、飛来物などによる衝撃を受ける可能性がある。そこで、衝撃強度向上を目的として、表面部に保護層を組み込んだ地上コイルを樹脂成型し、空気砲を用いて高速で鉄球を衝突させる試験を行った。この発表では、これまでの表面保護に関する開発経緯と、この衝撃試験結果について紹介する。


RFIDを利用した車載型地上コイル保守支援装置の開発

浮上式鉄道技術研究部 電磁路技術研究室 主任研究員 田中 実

高速走行する浮上式鉄道の安全を確保するには、ガイドウェイに敷設される膨大な数の地上コイルの保守管理を適正かつ効率的に行う必要がある。そこで、地上コイルにRFタグを取り付け、保守用車両に読取装置を搭載し、移動しながらデータを読み取り、車上で保守作業場所や作業履歴を確認できる車載型地上コイル保守支援装置を開発した。ここでは、この保守支援装置について紹介する。


鉄道用フライホイールに適用する超電導磁気軸受の開発

浮上式鉄道技術研究部 低温システム研究室 研究員 荒井 有気

長寿命・省メンテナンス・低損失が期待される、高温超電導コイルと高温超電導バルク体を組合せた全超電導磁気軸受でフライホイールを非接触支持する蓄電装置の開発を行っている。鉄道の蓄電に必要な容量である2トンの回転体の浮上が可能であることが確認され、高温超電導磁気軸受による完全非接触浮上に成功したのでここに紹介する。


リニアモータ技術を応用したレールブレーキの開発

浮上式鉄道技術研究部 電磁力応用研究室 副主任研究員 柏木 隆行

鉄道車両の非粘着ブレーキの一つに渦電流レールブレーキがある。これにリニアモータ技術を応用することで、これまでの渦電流レールブレーキで課題となっていた、停電時の動作や過度なレール温度上昇を解決できる可能性がある。ここでは、これまでのレールブレーキ開発の経緯や海外の動向を解説するとともに、開発した交流励磁型渦電流ブレーキの定置試験による試験結果などを紹介する。



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