第254回 鉄道総研月例発表会:信号通信技術に関する最近の研究開発

信号通信分野の最近の研究開発

信号通信技術研究部 部長 関 清隆

鉄道総研では、鉄道のさらなる安全性・信頼性の向上、低コスト化などを目指し、閑散線区向けの無線利用の列車制御システムなどの新しいシステムの開発、軌道回路の短絡不良や転てつ機の転換不良などへの対策による信号システムの信頼性向上、新しい通信技術や汎用技術などの鉄道分野への適用を目指した研究開発、信号システムの安全性評価、EMC評価などの評価技術の研究等に取り組んでいる。ここでは、信号通信分野における最近の研究開発の概要を紹介する。


耐ノイズ性の高い低周波軌道回路の開発

信号通信技術研究部 信号 研究室長 福田光芳

新型車両を開発する場合には、車両のノイズが信号設備へ影響を与えないことを確認しているが、耐ノイズ性の低い軌道回路が存在しており、課題となっている。また、多くの軌道回路種別があるため保守の効率化の妨げとなっている。これらを解決するため、軌道回路電流をデジタル符号化することにより耐ノイズ性を向上する方式を開発した。ここでは、耐ノイズ性を向上する考え方を説明した上で、開発した軌道回路方式の概要や現地試験の結果について紹介する。


保守作業低減を目的とした転てつ機モニタリングデータの活用方法

信号通信技術研究部 信号 主任研究員 五十嵐義信

現在、多くの信号設備モニタリング装置が導入・使用されているが、必ずしもモニタリングによって得られたデータが有効活用されているとはいえない。このため、転てつ機のモニタリング装置(ロックモニタ)の開発を行うとともに、そのデータの保守への活用について研究を進めている。ここでは、開発したロックモニタが、実際の転てつ機の保守作業改善に活用された事例と、モニタリングのデータを用いた長期的な転てつ機の管理方法に関する研究の状況を紹介する。


連動図表と連携した連動結線図自動作成システムの開発

信号通信技術研究部 列車制御 主任研究員 関根 俊

連動装置の制御は、駅固有の条件に依存しており、その条件を記述する連動図表の作成を支援するシステムを実用化している。今回、連動装置の動作を実現する伝統的な手法である連動結線図を、連動図表から自動生成する支援ツールを開発した。また、連動結線図は、2値演算を基本とするため動作が単純で正確に把握できるが作成や解読には高度な専門性を必要とする。そこで、ツールには、自動生成した連動結線図の動作を確認するための自動解説や動作模擬の機能も含めた。ここではこれらの概要を紹介する。


地上連動装置と軌道回路を省略した列車制御手法

信号通信技術研究部 列車制御 主任研究員 佐々木達也

閑散線区では、より効率的な経営を実現するため列車制御システムに対して低コスト化が求められており、その一方策として地上インフラの省略によるコスト削減が考えられる。本システムでは、車上から無線制御により直接進路を構成することで駅連動装置の省略が、また、ICタグを用いた車上での地点検知により軌道回路設備の省略がそれぞれ可能となり、地上の設備が転てつ機とその制御端末のみとなるため低コスト化が期待できる。ここでは、本列車制御手法について概要を紹介する。


無線列車制御システム向け通信ネットワークの評価手法

信号通信技術研究部 列車制御 副主任研究員 菅原宏之

無線列車制御システムの構築時に、無線基地局の配置や地上の情報伝送路などの通信ネットワークの設計を支援するシミュレータの開発を進めている。本シミュレータによって、ネットワークの信頼性や安定性を評価することが可能になり、大規模な現地試験を行うことなく、列車制御システムの動作状況を故障状態も含めて確認できるため設計を効率的に行うことができる。ここでは、本シミュレータの構成と評価の実施例を紹介する。


鉄道環境における公衆高速無線通信サービスの回線品質評価手法の開発

信号通信技術研究部 通信 副主任研究員 中村一城

近年、携帯電話やデータ通信端末等の公衆高速無線通信サービスが世の中に広く普及しており、鉄道業務での活用が期待されている。しかし、鉄道事業者が自由に回線設計・管理を行えず、鉄道へ導入する際の回線品質の評価手法が確立されていない。そこで、公衆高速無線通信サービスを用いた走行列車と地上間の回線品質を、鉄道特有の条件を考慮してシミュレーションにより評価する手法を開発した。ここでは、開発した回線品質評価手法とそれに基づいて検討した車上〜地上間における通信システムの構成例を紹介する。


電気鉄道用電波雑音シミュレーション手法の開発

信号通信技術研究部 通信 研究室長 川ア邦弘

列車の走行に伴って鉄道沿線に放射される電波雑音の強度を把握し、EMC規格への整合性や放射防止対策効果の確認を行うためには、現時点では時間とコストのかかる現地試験を実施するしか手段がない。そこで、列車走行に伴う鉄道から沿線への放射強度をシミュレーションする手法の検討を行った。ここでは、鉄道をアンテナとしてモデル化する手法および鉄道モデルに適した数値解析手法、ならびに開発したシミュレーション実行環境とシミュレーションの試行例を紹介する。



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