第257回 鉄道総研月例発表会:輸送計画・情報技術に関する最近の研究開発

輸送計画・情報技術に関する最近の研究開発

信号・情報技術研究部 部長 土屋 隆司

輸送計画・情報技術に関する研究開発として、「交通結節点における移動円滑化」および「新しい状態監視保全技術」の二つのプロジェクト型のテーマを推進している。本講演ではこれらを中心に、鉄道運営の効率化、利便性の向上をめざして進めている輸送情計画・情報技術における最近の研究開発について紹介する。


設備の状態監視用センサネットワークの運用法

信号・情報技術研究部 ネットワーク・通信 主任研究員 宮下 美貴

鉄道沿線の設備の状態監視をするため、センサネットワークを用いたモニタリングシステムの研究開発が進められている。本研究では、センサネットワークシステム全体の可用性を評価するために、橋、駅舎、斜面等、鉄道沿線への多数の無線センサノード導入を想定したシミュレーションを行った。冗長経路を持つアドホックネットワークにおいて、故障やバッテリー切れしたセンサの交換作業等の運用条件を考慮したシナリオのシミュレーションにより、ネットワーク運用戦略がコストやネットワークに及ぼす影響評価を実施したので報告する。


鉄道競合地域における定量的な駅勢圏設定手法

信号・情報技術研究部 主任研究員 武藤 雅威

駅勢圏とは駅を中心にその駅を利用すると期待される需要の勢力範囲を指すが、これまでは、徒歩圏を示す半径2km程の円を描く大まかな設定手法が汎用されてきた。そこで、駅周囲に拡がる町丁目毎に、近隣競合駅との需要の取り合いを吸引率としたモデル式を用いて算出する定量的な駅勢圏の設定手法を開発した。モデル式には、駅の魅力度に比例し、町丁目中心から駅までの所要時間に反比例する概念を持つハフモデルを用いた。本報では、手法の詳細と駅の商圏分析や需要予測への適用例を紹介する。


自動改札機データを用いたダイヤ乱れ時のOD予測手法

信号・情報技術研究部 ネットワーク・通信 主任研究員 明星 秀一

ダイヤ乱れが発生したとき、他線区への迂回や旅行中止による利用人数の変化を把握することが現状では困難であるため、運転整理によっては輸送力が過大になったり過小になったりする場合がある。そこで、自動改札機が蓄積するOD(発駅と着駅の組合せごとの利用人数)データから、ダイヤ乱れ時のODを予測する手法を考案した。本発表では、自動改札機データの分析結果を紹介するとともに、提案する予測手法の内容及び実績データを用いて実施した予測結果の例について紹介する。


効率性を重視した乗務員運用案の作成と運用案評価方法の提案

信号・情報技術研究部 運転システム 研究室長 坂口 隆

乗務員運用計画の自動作成手法はすでに実用化可能な技術レベルにあるものの、複雑な制約条件を満たすことに特化し、作成された運用案の効率性は十分に検討されていない。そこで本研究では、行路作成条件だけでなく、在宅休養時間等の交番作成上の条件も考慮することで計画に対する要員数を正確に評価し、これを最小化する運用計画作成手法を開発した。また、作成した運用案の効率性を多面的に評価するため、要員数という単一の評価指標ではなく、労働時間や休憩時間帯など、各行路に対する様々な指標が、運用計画全体に対して、どのように分布しているのかを可視化するツールを開発した。本発表ではこれらの内容を報告する。


コンテナ貨車管理システムの開発

信号・情報技術研究部 主任研究員 福村 直登

コンテナ貨物輸送に用いられるコンテナ貨車は、機関車や旅客用車両と同様に、一定周期ごとに検査を施行する必要がある。しかし、交番検査以上は貨物駅の判断で検査期限が近い貨車を車両交換の上、最寄りの検修区所に送り込むという、場当たり的な方法に頼っているため、検修区所間の業務量に不均衡が生じている。そこで、運用計画作成作業のシステム化にもとづくコンテナ貨車検修計画の新たな業務フローを考案し、さらに検修区所の業務量の平準化を考慮したコンテナ貨車検修計画を提案する手法を開発したので、その内容を報告する。


顧客満足度を考慮した貨物駅入出線計画の提案

信号・情報技術研究部 運転システム 研究員 田中 峻一

貨物列車が遅延して貨物駅に到着した際の貨物駅構内の入出線作業計画の変更は、到着順や作業の容易性を基準に作成されることがあり、変更された計画が荷物を発送した顧客側の配送要求をどの程度満たしているかに関する検討は明確にはなされていない。そこで、本研究では、現状の貨物駅における遅延の実態調査を行い、顧客側の視点から入出線作業を評価する方法を提案した。また、顧客満足度を考慮した貨物駅構内における入出線作業の変更を支援するシステムを開発したので概要を紹介する。


貨物輸送モーダルシフトのための陸上物流実態の分析手法

信号・情報技術研究部 交通計画 主任研究員 氏@国権

貨物鉄道は、地球温暖化や少子高齢化等の問題に対して大きな役割を果たすことが期待されている。しかし輸送機関間の競争が激化した現状の輸送市場においては、単なるモーダルシフトを行うことは容易ではなく、鉄道を含む複数の輸送手段を有機的に結合したインターモーダル貨物輸送の検討が必要となる。そこで、ある主要線区を通過した鉄道コンテナ貨物の輸送実態と、関係地域における鉄道コンテナにも適した陸上物流分布を考察し、貨物鉄道の潜在需要分析モデルを構築したので報告する。



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