第263回 鉄道総研月例発表会:車両技術に関する最近の研究開発

車両技術に関する最近の研究開発

車両構造技術研究部 車両振動研究室 研究室長 富岡 隆弘

 車両技術に関する最近の研究開発の中から、乗り心地向上に係るテーマとして、変位依存性の緩衝ゴムや車載機器質量を利用する等の新しい発想による車体弾性振動対策および可変軸ダンパによる制振制御による方法を紹介する。また、安全性の向上に係るテーマとして、車軸のはめ合い部形状の最適化により、輪軸の疲労強度を向上する研究について紹介する。


人間の挙動を考慮した踏切事故時の車両の衝突安全性評価手法

車両構造技術研究部 車両強度研究室 主任研究員 沖野 友洋

 車両の衝突安全性を評価する際、標準とする衝突条件がないこと、乗客・乗務員の被害を直接評価できないことが課題として挙げられる。そこで、近年の踏切重大事故を調査し、衝突速度と衝突対象物について統計的調査を実施した。また、踏切事故時の車体変形状況と乗務員挙動を同時に評価し、乗務員の傷害度を定量的に評価できる手法を構築し、様々な衝突条件での解析によって、乗務員の衝突安全性に関して検証したので報告する。


横風に対する鉄道車両の転覆限界風速評価方法

車両構造技術研究部 車両運動研究室 室長 日比野 有

 横風に対する鉄道車両の転覆限界風速評価式として、いわゆる「国枝式」が古くから用いられているが、近年の研究成果や事故調査などから得られた知見が十分に反映されていない課題がある。そこで、本研究では国枝式をベースに、転覆に影響を及ぼす各要素をより詳細に考慮した「総研詳細式」およびそれを動的解析に拡張した「動的解析式」を構築するとともに実物車両や模型車両を用いた検証試験を行ったので、その内容と各解析式の精度・用途などについて紹介する。


脱線後の編成車両の挙動解析シミュレーション

鉄道力学研究部 車両力学研究室 研究員 葛田 理仁

 脱線後の編成車両の挙動を把握するため、1/10模型車両走行試験と実台車を線路端から有道床軌道に落下させる試験を実施し、得られた知見を組み込んで脱線後の車両挙動解析が可能な3次元車両運動解析モデルを開発した。開発したモデルによって5両編成車両が脱線した場合の編成車両運動シミュレーションを行い、編成内で脱線した車両よりも後部の車両にブレーキ力を集中的に与えることによって脱線した車両の偏倚を抑える可能性について検証したので報告する。


車輪踏面の微小凹凸がクリープ力特性に及ぼす影響

車両構造技術研究部 車両振動研究室 副主任研究員 山本 大輔

 車輪とレール間に作用するクリープ力が車両の走行性能に影響を及ぼすことが知られているが、車輪削正で生じる程度の大きさのバイト痕(微小凹凸)がクリープ力特性に及ぼす影響については検討されていない。本発表では、車輪とレールを模擬した小型円筒試験片を使ったクリープ力測定実験により車輪踏面の微小凹凸に着目したクリープ力特性を調査するとともに、この特性が車両の運動特性に及ぼす影響について数値計算で検討したので報告する。


高周波振動に対する体感を反映した乗り心地評価法の改良

人間科学研究部 人間工学研究室 主任研究員 中川 千鶴

 鉄道の高速化に伴い増加した高周波振動成分が体感乗り心地に影響を与えているが、現行の乗り心地評価法は高周波振動の影響を反映できない。そこで本研究は、様々な振動台実験や走行試験を実施し、高周波振動の影響を反映した乗り心地評価法の改良を提案した。本手法は、新幹線はもちろん在来線にも適用できることを確認したので、その内容について紹介する。


弾性構造を適用した新しい合成制輪子

車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 副主任研究員 嵯峨 信一

 現用されている合成制輪子の一部では、湿潤時の摩擦係数を確保するためにブロック状の硬質金属等が挿入されており、ブレーキ中の車輪踏面にはブロックの応力集中による500℃以上の高温部が点在することになる。そのため、車輪踏面に熱亀裂等の損傷を与える可能性が考えられる。そこで、ブロックの代替として硬質粒子を均一配合し、車輪形状になじみやすい弾性構造を適用した合成制輪子を開発した。台上試験及び現車試験を実施した結果、車輪踏面の高温部は400℃程度までに低減され、乾燥時及び湿潤時の停止距離は、既存品よりも約10%短縮することを確認したので紹介する。


鉄道車両のエネルギー消費原単位簡易計算手法

車両制御技術研究部 動力システム研究室 主任研究員 近藤 稔

 鉄道車両の省エネ化を推進するため、改正省エネ法では、車両キロ当たりのエネルギー消費を表すエネルギー消費原単位の低減を、鉄道事業者に対し求めている。そこで、鉄道事業者における省エネ計画作成の支援を目的とし、車種や運用によるエネルギー消費原単位の違いを簡易に計算できる手法を開発した。ここでは、本計算法を用いて、様々な省エネ技術の効果的な使い方を検討した結果について紹介する。




第263回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ
Copyright(c) 2012 Railway Technical Research Institute