第268回 鉄道総研月例発表会:信号・情報通信技術に関する最近の研究開発

信号・情報通信技術に関する最近の研究開発

信号・情報技術研究部 部長 土屋 隆司

 鉄道総研では、様々な輸送改善施策や情報通信技術(ICT)を活用した新しいシステム等の性能、安全性・信頼性、費用対効果を適切に評価するための技術開発に力を入れている。本発表では、輸送サービス・輸送計画・運転設備等を評価するための列車運行・旅客行動シミュレータや列車制御用無線通信ネットワークを評価する技術を中心に最近の研究開発成果を紹介する。


列車ダイヤの頑健性向上に関する検討

信号・情報技術研究部 運転システム研究室 室長 坂口 隆

 大都市圏のラッシュ時間帯においては、混雑に伴う慢性的な列車運行遅延が発生している路線が少なくない。そこで、輸送力をできるだけ維持しつつ混雑による遅延の波及や増幅が生じにくい頑健な列車ダイヤについての検討ツールを開発した。本ツールでは、確率モデルに基づいて遅延現象を繰り返しシミュレーションし、遅延が波及しやすい個所を可視化する。これによりダイヤ変更前後の遅延状況の変化を視覚的に把握できる。本発表ではその概要を紹介し、モデル線区での検討結果について報告する。


輸送障害時における旅客流動データの分析手法

信号・情報技術研究部 運転システム研究室 副主任研究員 國松 武俊

 人身事故等の輸送障害発生時には、迂回、運転再開待ち等、各区間における利用者の動向を適切に把握し、それらに合致した運転整理を行う必要がある。本研究では、実際の列車運行に伴い日々収集される実績運行時刻データ、乗車率データを用い、運転整理に対する利用者の動向を可視化する手法を考案した。また、過去の輸送障害時のデータをもとに、輸送障害時の旅客流動を予測するモデルも開発したので、可視化手法と予測モデルについて紹介する。


駅における鉄道とバスの乗継利便性評価モデル

信号・情報技術研究部 交通計画研究室 研究員 鈴木 崇正

 バスは、駅と出発地・目的地とを結ぶ鉄道にとって重要な交通手段の一つであるが、その乗継には歩行や段差、道路横断など、様々な移動抵抗が存在する。その解消は乗継行動のみならず鉄道利用全体の利便性向上に資すると考えられるが、必ずしも十分な研究がなされていない。そこで、本研究では、乗継経路の物理的特徴に着目し、鉄道とバスの乗継利用者が感知する乗継移動抵抗を定量化し、その移動抵抗から各乗継経路の利便性を評価するモデルを開発したので紹介する。


設備監視のための無線センサネットワーク導入手法の提案

信号・情報技術研究部 ネットワーク・通信研究室 副主任研究員 羽田 明生

 近年、無線センサネットワークを活用した設備状態監視システムが注目されている。設備状態監視を目的とした無線センサネットワークは、長期的な運用が想定されるため、経済性や信頼性を勘案して効率的に導入することが求められる。そこで低コスト化を目的に、無線機の基本性能と現場環境を考慮して設計されたネットワーキング案に従い無線センサネットワークを導入する手法を開発したので、その概要を紹介する。


車上画像認識技術を用いた特殊信号発光機の視認確認手法

信号・情報技術研究部 信号システム研究室 副主任研究員 長峯 望

 特殊信号発光機は異常時のみ信号を現示するため、運転時間帯に検査することが困難である。現在は膨大な設置数を夜間に人手によって検査しているうえ、確認地点からの連続視認が確保されていない。そこで、車上で効率的・連続的かつ定量的に視認確認するために、近赤外線LEDと画像認識技術を用いた視認確認手法を開発し、現車試験によって有効性を確認したのでその概要を報告する。


速度発電機と慣性センサを併用した高精度列車位置検知システム

信号・情報技術研究部 列車制御研究室 研究員 祇園 昭宏

 鉄道の安全性・信頼性の向上を目的とした知能列車と呼ぶシステムの開発を進めている。このようなシステムにおいて、リスクを車上で判断して列車を安全に制御するためには、高い車上位置検知精度が求められる。速度発電機と慣性センサを併用することにより滑走や空転を検知・補正し、曲率や勾配の変化を捉えて絶対位置を検知する複合型の位置検知手法を開発したので報告する。


信号制御装置の統合論理設計のシステム化手法

信号・情報技術研究部 列車制御研究室 主任研究員 関根 俊

 信号装置には、連動装置、ATS制御装置、踏切制御装置などがあるが、線路配線や信号設備の設置に応じて装置個別の論理設計が必要である。これまでに、連動装置の論理設計(連動図表)を支援するシステムを開発し実用化した。一方、ATSや踏切の論理設計は、連動図表に基づいて行うため、単独の設計システムとするよりも、連動図表を基盤として統合的に設計できるようにすることで、飛躍的に効率性が向上する。そこで、統合論理設計のための基礎検討を行い、試作システムを製作したので、その概要を紹介する。




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