第280回月例発表会 鉄道沿線環境に関する最近の研究開発

鉄道沿線環境に関する最近の研究開発

環境工学研究部 部長 飯田 雅宣

速度向上や輸送力の増強に伴い、沿線環境への影響が増大するため、その緩和・低減が重要となる。ここでは、特に、鉄道の高速化に関係の深い現象である空力騒音、地盤振動、トンネル微気圧波などを中心に、発生メカニズムの解明、評価・予測手法、低減対策に関する最近の鉄道総研の研究開発の状況について紹介する。


動的解析による架道橋付近における地盤振動特性の評価

防災技術研究部 地質研究室 主任研究員 横山秀史

盛土区間の架道橋付近は盛土と橋台・桁の構造物境界であり、バラストの支持剛性の変化点であるほか、軌道の沈下等が生じやすい箇所でもある。そこで動的解析モデルを用いたパラメータスタディにより、架道橋付近におけるバラスト直下の支持剛性の変化や橋台背面盛土部での軌道沈下量の大きさなどによる地盤振動への影響を明らかにし、架道橋付近における振動対策工の効果について検討したので紹介する。


スリット付シェルターによるトンネル微気圧波の低減

環境工学研究部 熱・空気流動研究室 主任研究員 福田 傑

豪雪地帯における高速鉄道においては、複数のトンネルをスノーシェルターで接続することにより雪害対策を行うことがあるが、このシェルターは側面にスリットを設けることによりトンネル坑口から放射される微気圧波の低減対策にもなる。ここでは、現地測定および数値解析を実施し、シェルターのスリットから放射される微気圧波の特性、およびスリット付シェルターの微気圧波の低減効果を調べた結果を報告する。


先頭部形状を考慮した列車通過時トンネル内圧力変動の予測

環境工学研究部 熱・空気流動研究室 室長 斉藤 実俊

トンネル内を列車が高速で通過するとトンネル壁面に圧力変動が作用する。この通過時圧力変動は列車先頭部の影響を強く受ける。そこで、通過時圧力変動を正確に予測するために、任意の先頭部形状を有する車両模型で実験可能な列車模型発射装置を開発し、さらに、先頭部の断面積変化を考慮した数値シミュレーション手法を考案した。本発表では開発した模型実験結果からトンネル内列車通過時の圧力変動の特性を報告するとともに、数値シミュレーションの精度検証の結果を紹介する。


周辺構造物が沿線騒音の伝搬に与える影響評価

環境工学研究部 騒音解析研究室 主任研究員 小方 幸恵

鉄道車両が走行することによって発生した音は、音源から沿線へと伝搬し、沿線の受音点ではその伝搬過程の条件により様々な値の騒音が観測される。そこで、伝搬過程において沿線騒音に影響を与えるパラメータ、例えば跨線橋等の線路上空構造物の条件、防音壁や切土壁面の条件などによる影響量を定量的に評価することを目的として、音響模型試験を実施した。ここでは、その試験結果と周辺構造物による騒音の影響評価の方法について発表する。


レール継目用防音材の騒音低減性能の向上

材料技術研究部 防振材料研究室 室長 半坂 征則

レール継目部で簡易に施工できる騒音対策が求められている。そこで、鉄道総研では主としてロングレール区間の絶縁継目を対象に継目用防音材の開発を行っているが、これまでの防音材は効果が必ずしも十分ではなかった。このため、これまでの試験結果を踏まえ、上面に厚さ100mmの吸音材を適用するなどの継目用防音材の改良を行った上で、軌道面吸音材等の既存開発品と併用した試験を営業線で行った。その結果、目標とするレール近傍点で3dBの騒音低減が得られた。本発表では以上の継目部に対する騒音低減材の改良の経緯および効果検証試験結果を報告する。


風洞試験による新幹線車両下部から発生する空力音の評価手法

環境工学研究部 騒音解析研究室 主任研究員 山崎 展博

300km/h超で走行する新幹線の騒音は、主に集電系音と車両下部音で構成される。このうち、車両下部音では、台車部からの空力音が大きな寄与を占め、効果的な低減対策を講じるためにはその定量的評価が必要になっている。本報告では、大型低騒音風洞において、実車両下部の流れ場を模擬する試験法を紹介する。次に、この試験法を用いた台車部空力音に関する騒音の測定結果と実車での結果との整合性について紹介する。


流れ場制御を用いたパンタグラフ舟体の空力音低減手法

鉄道力学研究部 集電力学研究室 副主任研究員 光用 剛

沿線騒音に対して寄与の大きいパンタグラフ舟体から発生する空力音のさらなる低減を目指して、流れ場制御を用いた新しい空力音低減手法に関する基礎検討を行った。物体表面で流れを制御する手法としてプラズマアクチュエータを、流れ場に能動的に擾乱を与える手法としてシンセティックジェットアクチュエータをそれぞれ舟体に適用したところ、いずれの手法でも空力音の原因となるカルマン渦の生成を抑制できることがわかったので報告する。



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