概要

  • 日本のエネルギービジョンと最新技術

    東京工業大学 特命教授 柏木 孝夫

    東日本太平洋沖地震の発生を機に、日本はエネルギー政策を根底から見直す必要に迫られている。そうした中で、日本が今後とも成長していくためのグランドデザインやエネルギー基本計画をはじめとするビジョンについても様々な議論がある。具体的には、節電・省エネの推進、再生可能エネルギーの導入に加えてコージェネレーションシステムの高度利用、スマートコミュニティの推進など、日本の新たな電力システムの開発が求められている。ここでは、革新的な省エネ・新エネ技術を活用したエネルギーの効率的利用に関するビジョンや取り組みを概観するとともに、新エネルギービジョンにおける鉄道をはじめとする交通分野への期待について紹介したい。

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  • エネルギー効率向上をめざす鉄道総研の取り組み

     理事 高井 秀之

    地球温暖化対策として世界各国から具体的な数値目標が掲げられる中、日本はCO排出量の削減に努めるとともに、エネルギー消費量そのものの削減という大きな課題を抱えることになった。鉄道は比較的エネルギー効率の高い交通機関ではあるが、自動車や航空機などのエネルギー効率が急速に高まっており、鉄道においても一層のエネルギー効率向上が求められている。このような状況を踏まえて、エネルギー問題に関する世界あるいは国内の動向を概観した上で、鉄道システムにおけるエネルギー効率向上について、鉄道総研としてどの程度のエネルギー効率向上をめざし、どのような技術開発に取り組むかを総括する。

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  • 鉄道とエネルギー

    研究開発推進室 主管研究員 辻村 太郎

    近年のエネルギーを取り巻く状況は、資源確保や価格の変動の観点から世界の動きの影響を受けてさらに複雑化し、将来の見通しが一段と困難になっている。また、地球環境問題(気候変動)の深刻化への対応として、省エネルギーの推進や低環境負荷のエネルギー源への移行に対する要求が高まってきている。ここでは、近年の我が国における鉄道等におけるエネルギー使用状況の変遷を振り返り、エネルギー利用効率から見た鉄道の実態や他輸送機関との比較およびCO2排出の観点から見た鉄道の位置について紹介する。また、今後にその展開が期待されている向上技術による個別的な効果と鉄道全体としての課題について整理する。

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  • モーダルシフトによるエネルギー利用効率化

    企画室 戦略調査課長 武藤 雅威

    貨物輸送をトラックから鉄道へ転換するモーダルシフトには、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減などの諸問題に対応する有効な施策としての期待がかかる。本報では、現状における貨物輸送シェアの実態、両機関における輸送の類似性、両機関に対する荷主の意識調査、貨物列車ダイヤ編成上の問題、モーダルシフト効果の試算などの分析結果から、貨物部門におけるモーダルシフトの可能性と課題について考察する。また旅客部門では、利用者自身が交通機関を選択することになるが、国民の鉄道に対する意識調査および交通機関選択時の意思決定要因の分析結果から、省エネルギーの交通機関である鉄道が選択されるための手掛かりについて述べる。

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  • 車両分野のエネルギー利用効率化

    車両制御技術研究部 部長 小笠 正道

    鉄道事業のエネルギー消費の多くは列車運行によるもので、旧くから車両の消費エネルギー削減について種々の方策が取られてきた。さらに現在、電力節減が話題になり、エネルギーのさらなる有効活用が求められている。鉄道総研では、これまでに車両のエネルギー利用効率化に向けて各種のエネルギー損失低減策やエネルギー再利用策の技術開発を行ってきた。消費量予測に基づくエネルギー削減指針を与える計算ツールの開発、車載蓄電ハイブリッド技術や燃料電池搭載車両など新たな先導開発も実施してきている。本講演では、これらの開発状況の紹介と各種手法の位置付けの明確化、今後必要となる技術など新たな方向性について述べる。

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  • 駅のエネルギー利用効率化

    構造物技術研究部 建築研究室長 伊積 康彦

    以前と比較すると、駅ではエスカレータ、エレベータのような電力を要する設備が増えている。しかし、昨今の我が国の電力需給状況、化石燃料への依存度の低減、地球温暖化防止等の観点から、交通機関の省エネルギー化は必須であり、駅をはじめとする鉄道に係る諸施設の省エネルギー化も重要な課題である。本講演では、駅のエネルギー消費の内訳や省エネルギー技術、また駅の省エネルギーを考える上で重要な項目の一つである温熱環境について、実態調査、被験者試験、数値解析などの研究成果を紹介する。さらに鉄道事業者が実施している温熱環境対策、照明の負荷低減対策、トイレの節水対策などの事例を紹介し、今後解決すべき課題について述べる。

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  • 電力分野のエネルギー利用効率化

    電力技術研究部 部長 奥井 明伸

    低炭素社会の実現や近年の電力不足への対応の一環として、電気鉄道でもエネルギー利用効率の向上が求められている。鉄道事業者の中には既に自然エネルギーの利用や電力貯蔵装置の適用など、省エネルギー技術の導入が始まっている。鉄道の電力供給設備において、エネルギー利用効率を向上させるには、送電損失の低減や電気車の回生電力の有効利用が必須であるとともに、電気鉄道固有の間欠的エネルギー消費形態を改善するいわゆるピークカット等の電力品質の維持向上が重要である。本講演では、エネルギー効率向上のための実施例の効果や課題について概説するとともに、鉄道総研の取り組みについて紹介する。

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