ベイナイトレールのガス圧接手法の改良

1.はじめに

 ベイナイトレールは,化学組成に起因し,従来の熱処理レール(以下,「HHレール」と表記)よりもさらにガス圧接性が悪いため,HHレールの標準圧縮量30mmを上回る40mm程度の圧縮量を達成することで継手品質を確保する必要があります.このような中,TGP-E型ガス圧接機によるレールセンター内の一次溶接施工では,一旦25mmの圧縮量で圧接施工し膨らみを押抜いた後,再度圧接部を加熱し15mm追加圧縮する「二段工程」により圧縮量40mmを達成しており,多大な労力が費やされていました.そこで,TGP-E型ガス圧接機によるベイナイトレールガス圧接施工の効率化を目的に,「一回の圧接施工」により達成できる33mm程度の圧縮量で十分な強度特性を有する継手を作製可能な圧接施工方法について検討しました.

2.検討方針

 これまでに実施した可搬型のTGP-V型ガス圧接機等によるベイナイトレールガス圧接試験の結果,終始一定加圧力を負荷する「定圧法」(現用法)の場合には,HHレールの標準圧縮量30mmを確保しても磁粉きずの発生を防止できず,レールガス圧接部の曲げ基準値を満足する継手を達成できないことがわかっています.一方,ガス圧接施工では,圧接界面温度が高いほど接合阻害因子となる酸化介在物量が減少しますが,この圧接界面温度の上昇には,圧接途中工程において加圧ポンプの油圧回路を遮断し,圧縮変形を一旦停止させる「変圧法」が有効であることが示唆されています1).すなわち,変圧法を適用することで,より小さな圧縮量で良好な接合を達成できると考えられます.そこで,変圧法を基にしたTGP-E型ガス圧接機によるガス圧接施工方法について検討し,ベイナイトレールのガス圧接施工に適用できる圧接施工条件を提案することとしました.

  • 表1 変圧法による試験体の作製手順(JIS60kg)

3.変圧法の適用による継手性能向上効果

 変圧法による継手性能向上効果を検証するため,TGP-E型ガス圧接機による試験体作製作業に変圧法を適用しました.本試験では,圧縮量として30mmおよび33mmの2条件を設定し,表1に示す手順により各圧縮量でJIS60kgベイナイトレール試験体を2体作製しました.なお,油圧回路を遮断する圧縮変形停止過程では圧接部の表面が溶融し,溶融した部材の滴下によって加熱バーナの逆火現象が発生します.よって,油圧回路の遮断時間は,事前検討により,部材表面が過剰溶融しない範囲内で選定しました.

 磁粉探傷試験では,いずれの試験体にも磁粉きずは検出されず,頭部下向(HD)姿勢による静的曲げ試験でも良好な結果が得られました.図1には,変圧法による試験結果を定圧法による結果と併せて示します.この結果より,変圧法による試験体の方が定圧法による試験体に比べて,より高い破断荷重とたわみが得られると言えます.

 以上の結果から,変圧法を適用し,一回の圧接工程で達成できる33mmの圧縮量を確保することで,磁粉きずが発生せず,曲げ基準値を十分に満足するJIS60kgベイナイトレールガス圧接継手を作製できると判断されます.なお,本研究では,JIS50kgNベイナイトレールの圧接施工においても変圧法を適用すべく検討を実施し,一回の圧接施工で十分な強度特性を有する継手を作製可能な圧接施工条件を見出しました.表2に,本研究で提案した変圧法によるベイナイトレールのガス圧接施工条件を示します.


  • 図1 圧縮量と強度特性の関係 (HD破断)
  • 表2 提案したベイナイトレールガス圧接施工条件

4.変圧法における油圧回路の自動制御に関する検討

 変圧法適用下では作業途中における油圧回路の遮断・復帰操作が必要であり,作業者が「圧縮変形量」および「経過時間」を監視しながら所定の操作を実施しなければなりません.操作は複雑ではありませんが,作業項目の増加は作業者の負担増につながります.そこで,油圧回路の遮断・復帰操作の自動化に関して検討し,制御機構を構築しました.図2に制御装置の設置状況を示します.なお,本制御機構の有効性を検証するため,当制御機構を用いてJIS60kgベイナイトレールガス圧接施工を実施した結果,当制御機構により,変圧法において目標とした制御を達成できることを確認しました.


  • 図2 制御装置の設置状況

5.おわりに

 本研究では,TGP-E型ガス圧接機によるベイナイトレールガス圧接施工の効率化を目的に,変圧法に基づくガス圧接施工条件を提案しました.さらに,変圧法適用下で必要となる油圧回路の遮断および復帰操作の自動制御を実現するための機構を構築し,レールガス圧接試験によりその有効性を確認しました.現在,当制御機構および提案したガス圧接施工条件を適用して実施工が行われています.

【参考文献】

1) 辰巳光正 他:レールガス圧接における加熱バーナの改良と加圧方式の検討,鉄道総研報告,Vol.13,No.5,pp.27-32,1999

(記事:山本隆一)

軟弱地盤中のシールドトンネルの変形挙動について

1.はじめに

 シールドトンネルは,昭和40年前後から急速に建設されてきたこともあり,中には変状が発生し,補修が必要とされるものも出てきています.図1は,シールドトンネルで見られるひび割れの例ですが,ごく稀に近接施工や完成後の荷重増加,周辺地盤の圧密沈下等の外力によってトンネルが変形し,曲げひび割れが発生する場合があります.外力による変状は,長期に亘って徐々に変状が進行するものもあり,将来,構造安全性に影響する可能性も懸念されます.したがって,このような変状の進行を予測することが,維持管理上有効となります.そこで,外力による変状の一つである軟弱地盤中のシールドトンネルの変形を対象に,ひび割れの発生状況や変状進行性をシミュレーションする手法2)を検討したので報告します.


  • 図1 シールドトンネルのひび割れ発生例1)

2.変状シミュレーション

 図2にシミュレーションの流れを示します.まず,トンネルが経験した環境履歴を入力して土水連成解析を行い,トンネル全周の内空変位の分布を求めます.つぎに,トンネルのみを構造部材の形状や非線形挙動も含めて精緻にモデル化し,土水連成解析で求めた内空変位分布を入力して,非線形三次元FEM解析を行います.ここでは,図3に示すような沖積粘性土層に位置するシールドトンネルを対象にしました.また,トンネルが経験した環境履歴として,「①トンネル掘削による影響」と「②トンネル完成後の地下水位変動による影響」を考慮しました.


  • 図2 シミュレーションの流れ

  • 図3 解析対象(地質縦断図)

(1) 土水連成解析

 土水連成解析は,図4に示すような二次元弾性モデルを用いました.まず,地盤の自重解析を間隙水圧が消散するまで行い,つぎに,シールド掘削面を解放した後にトンネルに相当する要素を配置することで,トンネル掘削の影響を考慮しました.その後,地下水位の影響としてステップ毎に水位上昇量をYl-c層上面に等分布荷重で作用させました.

 なお,シールド掘削に伴う応力の解放程度は,掘削面の節点に線形ばねを配置し,このばね値を変更することで調整しました.トンネルが経験した環境履歴には,地上部の利用状況の変化等による影響も存在した可能性がありますが,これらの定量的な記録が現存しないため,トンネル掘削による影響にこれらを含めることとしました.

 解析の対象とした地点では,図3に示す位置で定期的に内空変位が計測されており,鉛直方向に縮小,

 水平方向に拡大する傾向が確認されています.ここでは,シールド掘削面の解放割合を変えたパラメトリックスタディを行い内空変位の計測結果と比較しました.

 図5は,内空変位量について,解放割合100%のときの解析結果を計測結果と比較して示したものです.トンネル掘削および地下水位の上昇を考慮して作用させた等分布荷重の影響により,年数とともに変位が増加し,計測結果と対応していることが確認できます.


  • 図4 土水連成解析の解析モデル

  • 図5 内空変位量の経時変化(解放割合100%)

(2) 非線形三次元FEMによるひび割れ再現解析

 図6に非線形三次元FEMに用いた解析モデルの例を示します.ここで,シールドトンネルを構成するセグメントは,鉄筋コンクリート製ですが,コンクリートを非線形立体要素,鉄筋を棒要素で個々にモデル化しました.

 解析結果のうち,セグメントのクラッキングひずみの分布図の一例を,図7に示します.セグメント内面側のひび割れは,供用後1.5年目に天端,下端の主桁と縦リブの接合部に発生する結果となりました.2年目以降は同じ位置のひずみ量が増加するとともに主桁全体に広がり,以後,7年目にかけて天端側は対象トンネルで観察されたひび割れと同様に主桁全体に徐々に分散する結果となりました.

 また,ひび割れ幅と周方向継手の目開き量について,非線形FEMと鉄道の設計標準に示されているはり-ばねモデルによる方法の結果を比較しました(図8).今回の検討ケースでは,設計標準による方法の結果が,非線形FEMよりも安全側の結果となっていることが確認できました.


  • 図6 非線形FEMの解析モデル

  • 図7 クラッキングひずみ発生例(7年目)

  • 図8 鉄筋応力,ひび割れ幅,目開き量

3.おわりに

 これまではトンネル内面側から見えるひび割れや計測データといった限られた情報のみで,変状の進行性などを判断せざるを得ないのが実情でした.今回紹介したような解析的な手法を活用することにより,合理的なシールドトンネルの維持管理ができるようになるものと考えています.

<参考文献>

1) 鉄道構造物等維持管理標準・同解説(構造物編)トンネル,鉄道総合技術研究所,2007.1

2) 焼田,仲山,小西,赤木:シールドトンネルのひび割れ進展過程に関する一考察,土木学会論文集F1トンネル工学特集号,Vol.67,No.3,pp109-116,2011.

(記事:焼田真司)

基礎標準講習会における主なQ&A

 鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物(以下,基礎標準)は,平成24年1月に改訂版が出版され,その講習会を東京および大阪の2会場で開催しました。本稿では,両講習会の際に寄せられた質問と回答の中で代表的なものを抜粋してご紹介します。

番号No.1質問対象の条文6.4 地盤の諸数値の特性値および設計用値
質問 地盤の変形係数に関する地盤調査係数γgEが,例えば標準貫入試験の場合では,γgE=1.2~1.4と幅があるが,どのように使い分ければよいか教えてほしい。
回答 本質的には,地盤調査係数γgEで考慮する地盤調査の推定精度には,ボーリング位置からの距離などの空間的なばらつきの影響も考慮する必要があります。
 本標準では,実務上の取扱いの目安として,P.92において,ボーリング調査間隔が本調査の間隔の目安(P26,狭い平野では50~100m以下)を満足する場合には下限側の値を,これよりも遠い位置のボーリングデータを転用する場合には上限側の値とすることを記載しておりますので,これを参考としてください。
番号No.2質問対象の条文13.2.2.3 設計鉛直支持力 (支持力係数Ncについて)
質問 旧基礎標準には内部摩擦角φが大きくなると粘着力項に関する支持力係数Ncが5.1よりも大きな値となることが示されていましたが,新基礎標準ではこの表が削除されており,Ncはφによらず5.1とのみ記載されています。粘着力度cの卓越した岩種の岩盤上の直接基礎でNc=5.1としてしまうと,従来と設計結果が大きく異なってしまう可能性があります。このような場合の支持力係数はどう考えればよいですか? 
回答 支持層が岩盤の場合(P.150)や複数の現位置試験を実施した場合(P.188)など,cとφの両方を考慮して支持力公式により設計支持力を算定する場合には,φの影響を無視してNc=5.1とするのではなく,φに応じた旧基礎標準の値を用いてよいと考えられます。ただし,cとφの両方を考慮した場合には,これらの設計用値の信頼性が設計結果に及ぼす影響がより大きくなります。そのため,安易にN値のみから設計するのではなく,事業者,設計者および施工者を含めて,十分な協議を行って総合的に判断する必要があることにご注意ください。なお,旧基礎標準の解説表8.3.10-1のNcの値は,Terzaghiの支持力式の全般せん断破壊の場合の解析解Nc=(Nq-1)cotφで算出されています。
番号No.3質問対象の条文13.4.2 基礎周辺の地表面の傾斜が著しい地盤の直接基礎
質問 「斜面全体が安定していること」とは具体的にはどういう状態ですか?
 (盛土の場合,山岳の場合などそれぞれ)
回答 一般には円弧すべり法による照査を満足する状態です。円弧すべり法の詳細は盛土および切土(≒自然地山)ともに土構造標準を参照してください。
番号No.4質問対象の条文15.1.4 杭配置と杭間隔
質問 場所打ち杭で2.0m程度の太径を用いる場合は,現場の状況を見据えたうえで,2.5Dよりも杭間隔を狭めても問題ないですか? その際,2.0D程度なら採用できますか?
回答 杭間隔が上記よりも狭い場合に鉛直支持力がどの程度低下するか(=群杭の影響)は,地盤工学的にもいまだ十分には明らかになっていませんので,定量的に検討するためには載荷試験や実験,数値解析等から個別に判断する必要があります。ただし,鉛直支持力の余裕度が十分に大きいことなどを確認した上で,総合的な判断に基づき杭間隔を狭くすることは,設計者の裁量の範囲内と考えられます。
番号No.5質問対象の条文15.2.2.3基準支持力
質問 場所打ち杭の支持力算定式が,特に砂礫の場合で旧基礎標準よりも小さくなっているようであるが,従来よりも杭径を大きく設計する必要が生じないか?
回答 基準支持力算定式自体は安全側に変更されましたが,地盤抵抗係数も変更されたため,一様に設計支持力が低下するということはありません。特に砂礫地盤では,従来はN値50と扱っていた地盤でも換算N値は100(=50回打撃で15cm貫入)近くになる場合も多いと思われますので,これらを適切に評価すれば,従来と同程度の杭径で設計が可能です。
 むしろ,従来,設計用のN値を設定する際に設計者が慎重な判断を要するような地盤条件を見逃すことが無いような設計標準になっています。
番号No.6質問対象の条文15.3杭基礎の性能照査
質問 群杭基礎の水平変位の設計限界値を求める際の基礎の換算抵抗幅LA=√(N×D)については,例えば橋脚でL方向とC方向の杭列数が異なることがありますが,限界値は検討方向によらず同一でいいのですか?
回答 本標準では,性能照査型設計という観点から,異種基礎(例えばケーソン基礎)との性能比較が容易となるよう,基礎の性能照査を行う際の限界値は検討方向に依存しない基礎に固有の値と考え,換算抵抗幅LAを検討方向によらず同一の値としています。また,本標準では杭の水平地盤抵抗は杭毎のばらつきを考慮してある程度下限側となるように設定されています。そのため検討方向の杭列数が同じでも奥行き方向の杭列数が多いほど,実際には杭の地盤抵抗のばらつきが平均化されることにより設計計算よりも変位は小さくなると考えられます。このような奥行き方向の杭列数の効果は,本来は地盤抵抗係数等の信頼性理論に基づく安全係数として考慮すべきですが,そこまでの定式化には至りませんでした。本標準では杭列数が少ない方向の検討においても同一の限界値とすることで,杭総本数が多くなれば限界値が大きくなり,上記の影響を定性的に考慮できるようにしています。
番号No.7質問対象の条文15.4.3支持層または基礎周辺の地表面の傾斜が著しい地盤の杭基礎
質問 斜面の影響を考慮した有効抵抗土圧力の具体的な算定方法を教えてほしい。
回答 詳細には,斜面の形状に応じて試行くさび法により算出することとなります。
 斜面形状が複雑でない条件であれば,すべり面を平面で仮定した土塊のつり合い式(P.301の文献2)=NEXCO設計要領に記載)を求め,エクセル等ですべり面角度を変化させて計算して,最小値を求めることができます。

(記事:西岡英俊)

波状摩耗管理システムの開発

1.はじめに

 軌道検測車などで測定されている軸箱加速度については,波状摩耗に対して高い相関があること等がわかっており,これまでに軌道保守管理への活用法の検討が行われてきました.しかしながら,走行速度や加速度計の取り付け位置の違いにより,同じレール凹凸量上を走行しても軸箱加速度の値は変化するため,軸箱加速度を管理指標として活用している事業者は少ないのが現状です.

 そこで,軸箱加速度によるレール凹凸の評価のため,在来線検測車の軸箱加速度とレール凹凸量の関係を把握し,軸箱加速度を活用した波状摩耗管理システムの開発を行いました.

2.軸箱加速度によるレール凹凸評価

 波状摩耗が発生している曲線におけるレール凹凸を詳細に把握するため,鉄道総研で開発したレール凹凸連続測定装置を用いてレール凹凸測定を実施しました.対象とした曲線は波状摩耗が確認された3曲線(バラスト軌道,曲線半径402m)です.なお,測定されたレール凹凸には,復元処理を行った後,対象とする波状摩耗の波長に応じたバンドパスフィルタ処理を施し,振幅については,波状摩耗が正弦波であると仮定して,波形の標準偏差に2√2を乗じて算出しました.そして,軌道検測車により得られた軸箱加速度データとの関係を分析しました.

 図1に,測定を実施した3曲線での,25mロットごとの軸箱加速度標準偏差とレール凹凸標準偏差を速度域ごとにまとめたものを示します.速度により軸箱加速度とレール凹凸の関係が異なることから,速度をパラメータとし,軸箱加速度からレール凹凸を推定する補正式の検討を行いました.過去の研究成果において提案されている補正式も参考にし,今回レール凹凸測定を実施した区間内のデータを用いて推計した補正式は以下の式(1)となります.

 ここで,rσ:レール凹凸標準偏差(mm),ασ:軸箱加速度標準偏差(m/s2),V:凹凸量換算速度(km/h),a:係数a(46.9022),b:係数b(0.0073),c:係数c(1.9531)

 図2に実測のレール凹凸標準偏差と,軸箱加速度データから推定を行ったレール凹凸標準偏差の関係を示します.多少のばらつきは見られるものの,概ね軸箱加速度によるレール凹凸の推定ができていることがわかります.


  • 図1 軸箱加速度とレール凹凸

  • 図2 実測値と推定値の関係

3.波状摩耗管理システムの開発

 2章の結果より,レール凹凸量は,軸箱加速度と速度の関数で表せることを確認しました.この関係を用い,在来線検測車の軸箱加速度を活用した波状摩耗管理システムの開発を行いました.開発した波状摩耗管理システムは,軸箱加速度の値によりレール状態を評価する処理を行うもので,図3に示す構成(レール状態評価モデル)となっています.このモデルは,軸箱加速度の最大値および標準偏差の大きさや左右差から,レール状態不良や波状摩耗を評価することが可能です.

 本システムでは,軸箱加速度,測定速度,軌道狂い,保守実績の各履歴データを処理して,凹凸量とレール保守優先度を出力します.また,凹凸量の大きな箇所を抽出するだけでなく,凹凸が軌道変位進みの増加に大きく影響している可能性が高い箇所の抽出も可能となっています.

 2章で測定を実施した線区におけるデータを用いて,波状摩耗管理システムにより,レール波状摩耗の評価を行いました.用いたデータは約20km間における25mロットごとの軌道検測データと軸箱加速度データの約1年間分です.

 図4にレール交換を実施した曲線での,レール凹凸の推移図を示します.この曲線では,2013年7月にレール交換を実施していますが,交換後のデータでは,それまで大きかった凹凸量が大きく減少し,0近くへ推移していることがわかります.また,本システムにおいて波状摩耗ロットとして抽出された箇所は,いずれも現地において波状摩耗が確認されている曲線のものであり,波状摩耗箇所を適切に抽出できていることを確認しました.更に,抽出された波状摩耗箇所に対しては,凹凸量標準偏差や最大値または軌道変位進み量などにより,レール削正やレール交換対象箇所の順位づけが可能です.


  • 図3 レール状態評価モデル

  • 図4 凹凸換算量推移図

4.おわりに

 軸箱加速度によるレール凹凸の評価のため,軸箱加速度とレール凹凸量の関係を把握し,軸箱加速度を活用した波状摩耗管理システムを開発しました.本システムを用いることで,波状摩耗箇所やレール削正(または交換)対象箇所の抽出などが可能であることを確認しました.以上の結果,線区によってしきい値を適切に設定することにより,軸箱加速度によるレール波状摩耗の評価や管理が可能となりました.

(記事:清水惇)