レンガ・石積みなど組積橋脚はいまだ多く現存し、順次、耐震補強されてきていますが、そのほとんどは躯体補強が目的で、基礎の現有耐力を考慮した補強法となっていません。組積橋脚の場合、木杭基礎等の旧式基礎が多く、躯体だけを強固にした場合、大地震時には基礎に被害が集中する可能性があります。
このため、基礎と補強躯体の耐震強度のバランスを考え、L2地震による作用に対しては木杭基礎が降伏に至る前に補強躯体を先行降伏させるRC巻立て耐震補強法を開発しました(図1)。本補強法の開発に際しては、RC巻立てにより補強したレンガ橋脚模型の載荷試験(図2)を実施し、本工法の妥当性を検証しました。なお、本工法ではフーチングに定着したアンカーが降伏した後においても変形性能が十分に発揮されることが必要となりますが、太径アンカーの引抜き試験を数多く実施し、この試験結果に基づき適切な定着法を提案しました。
旧式基礎には木杭基礎の他に、べた基礎(段フーチング式直接基礎)も多いのですが、地震による作用はべた基礎が有する変位性能によって吸収可能で、補強躯体の耐力はべた基礎の耐力を上回るものとして設計を行えばよいこととしました。
これらを総合し、設計実務に供するL2耐震補強マニュアルを作成しました(図3)。なお、従来法として一般的な鋼鈑巻き補強は多くのずれ止め鉄筋が必要ですが、今回開発した工法では不要であり、工費・工期とも改善されます。
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