山岳トンネルは、使用開始後も地圧の作用により変形、ひび割れなどの変状(図1)を生じることがあります。変状を生じたトンネルも将来にわたって適切に維持管理していく必要がありますが、トンネルの変状が将来どのように進行していくかの予測法は確立されていないのが現状です。このため、トンネルの地圧による変状進行のシミュレーション手法を開発しました。
開発したシミュレーション手法は、時間の経過に伴う地盤の強度低下量を入力することにより、地山の破壊、トンネルの変形・破壊を表現するというものです。実際に変状を生じた供用中のトンネルに対して、本シミュレーション手法を用いて再現解析を行い、変状の種類、発生位置、発生時期が解析と実測の間で一致することを確認しました(図2)。本シミュレーション手法を用いることにより、ひび割れなどの変状の発生時期の予測や、対策工の適切な施工時期を予測することができます(図3)。
また、本シミュレーション手法を設計実務において適用する際の設計者の負担を軽減するため、地山の強度と内空変位速度の計測結果からシミュレーション解析に入力する値を容易に取得することができるノモグラムも作成しています。
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