慣性正矢法とは、加速度を2回積分すれば変位となるという慣性法の原理を利用して軌道変位を測定する方法です。慣性法による軌道検測装置はこれまでも一部の鉄道事業者で利用されてきましたが、積分時の誤差によって変位が正確に求められないという欠点がありました。今回開発した慣性正矢法は、この積分時の誤差が保線の現場で用いられている正矢法の検測特性と等しくなるようにする演算処理によって、10m弦正矢法と同等の出力が得られるという特徴を有しています。また1組のセンサユニットで検測が可能なことから、3組の変位計が必要な従来の軌道検測車よりも低価格な装置となります。さらに、新たに開発した2軸レール変位計によってセンサユニットとレール間の上下、左右変位を非接触で検出可能となったため、センサユニットの取り付け位置の自由度が増します。例えば図1に示すように営業車の台車に装架すれば、軌道変位の常時モニタリングも可能となります。
新幹線の営業車両搭載を目指して製作したプロトタイプ機による機能確認試験での結果、20km/h以上の速度域におけるデータの繰り返し誤差は最大で0.5mm以下、標準偏差で0.2mm以下と従来の検測車と同等の精度を有し、かつ慣性法では難しいとされていた低速走行時の検測精度も、実用上ほぼ問題とならないことを確認しました(図2)。
今後は、プロトタイプ機を用いて九州新幹線で装置の耐久性を確認します。
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