1.地震時の車両振動が構造物の応答に及ぼす影響の簡易評価法

 大きな地震動を受けた場合には、車両の振動が構造物の応答に影響を及ぼす可能性がありますが、これについてはこれまで明らかにされてきませんでした。そこで、車両と構造物との動的な相互作用を考慮した数値解析や実高架橋の振動計測を行い、構造物の地震時応答を簡易かつ高精度に評価する手法を提案しました。
 数値解析では、構造物の地震時応答に及ぼす要因として、車両種別や速度、構造物の等価固有周期や降伏震度、構造物と車両の質量比、地震動の卓越周期などの影響を定量化しました(図1)。車両と構造物は、各要因の組み合わせにより地震時には複雑な挙動を示しますが、大別すると車両と構造物が逆方向に動くか、同一方向に動くかの 2つに分類でき、前者は構造物に制振効果を、後者は増幅効果をもたらすことが分かりました(図2)。
 設計実務に適用できる簡易評価法として、一般の耐震設計(静的解析)を対象に、 構造物と車両の質量比と構造物の降伏震度から、車両振動の影響を慣性力として評価する等価慣性力法を提案しました。長大橋などの特殊な設計(動的解析)に対しては、 上記要因と構造物の固有周期から、設計で考慮すべき車両重量の割合(等価重量率)を算定し、その質量を構造物に付加した単純なモデルで車両振動の影響を評価する等価重量法を提案しました(図3)。
 これらにより、構造物の地震時応答を適切に算出することができるため、既設構造物の高精度かつ経済的な耐震診断が可能となります。