6.山岳トンネルの覆工の安全性評価法

 山岳トンネルでは、地圧の作用によりトンネルが変形して覆工に圧ざ(曲げ圧縮破壊)を生じ、覆工片がはく落して列車の走行安全性が損なわれることがあります。これまでは、圧ざによるはく落に対する安全性の定量的な評価法はありませんでした。そこで、模型実験、数値解析を実施し覆工の安全性評価法を提案しました。
 種々の材料(無筋コンクリート、短繊維補強コンクリート、鉄筋コンクリート、レンガ等)からなる山岳トンネル覆工に対して、模型実験を行うとともに、覆工の圧ざを考慮できる数値解析で模型実験を再現しました。その結果、どの材料に対してもトンネルの水平内空縮小率(図1)を指標とすることで、圧ざの発生が評価できることを明らかにしました(図2)。さらに、実トンネルを想定した数値解析を行い、各種覆工の圧ざ発生時の水平内空縮小率を定量的に示しました(図3)。
 また、維持管理の実務で利用できるように、地山の種類、トンネル構造毎に、圧ざによるはく落発生に対する健全度と水平内空縮小率の関係を示し(表1)、覆工の安全性評価マニュアルとしてまとめました。本手法は、地圧の作用により覆工の圧ざの発生が危惧される山岳トンネルの維持管理におけるスクリーニング手法として適用できるほか、今後山岳トンネル覆工に限界状態設計法を適用する際の性能照査法としても役立つと考えられます。