9.事故の背景要因を分析するための聞き取り調査手法

 事故やトラブルの防止には、関係者の行動や発生状況等の十分な情報収集が必要です。そのため、現場では事象の関係者を対象に聞き取り調査(図1)を実施していますが、従来は標準となる手法がなく、情報不足により調査や報告の手戻りが発生しやすくなっていました。そこで、聞き取り調査を実施する際の心構えや留意点を考慮した聞き取り調査手法(図2)と手法の導入を支援するための教育プログラムを作成しました。
 本手法では、事象の関係者(調査の対象者)の話をよく聞くことがポイントです。質問や確認の前に事象場面を思い出してもらい、関係者の自由な報告を促します。その上で、さらに「○○の場面について詳しく説明してください」「ふだんはどうしていますか」といったオープンな質問(「はい」や「いいえ」で簡単に答えられない質問)や様々な視点による多角的な質問を行います。
 本手法を試行し、調査時の実際の発言内容が従来と違うかどうかを分析しました。この結果、聞き取り調査の方法を本手法に変えると関係者の事象の背景要因についての発言量が倍増し、本手法の有効性が確認されました(図3)。
 本手法は調査や調査者に対する印象を良くするため、職場内の信頼関係を良好にし、対策につながる安全への取り組みや今後の調査協力を促すことも期待できます。