6.画像処理技術によるコンクリート構造物検査の高精度化

 画像処理技術を用いたコンクリート構造物の検査においては、変状抽出精度の一層の向上を図ると共に、変状がどの程度進展したかを把握する技術が求められています。 これまでに提案した手法に比べ、精度向上のために以下を開発しました。
 まず、元画像に対して異なる解像度の画像を用意し、検出対象毎に最適な圧縮率の画像を使用する多重解像度の考え方を提案しました(図1)。例えば、不鮮明な画像でも検出できる対象物は圧縮率の高い画像を利用することで、ノイズの影響が軽減するとともに処理速度が向上しました。一方、これまでの手法では、ひび割れ検出の性能を左右する画像処理パラメータを試行錯誤で設定していました。それに対し、代表的なコンクリート表面に対して良好な検出結果が得られる基準値を予め用意し、このパラメータのセットを選択するようにしました。個々の数値を調整する必要がないので、熟練者でなくてもひび割れを検出できるようになりました(図2)。また、ひび割れの進展については、前回と今回の画像を重ね合わせて判定する方法が一般的ですが、撮影条件の違いによる画像間の位置ずれの補正に課題がありました。そこで、着目したひび割れの端点を主軸方向に繰り返し探索することで、ひび割れの進展を推定する手法を開発しました(図3)。