8.無線式列車制御システムの安定性を評価するシミュレータ

 無線式列車制御システムを導入する際には、 制御電文の伝送誤りや遅延によって列車の安全・安定運行が阻害されないよう、 無線通信ネットワークを適切に設計・構築する必要があります。 しかし、 鉄道沿線の電波伝搬特性や雑音、干渉妨害等を考慮しながら無線通信ネットワークを設計・構築するためには、 無線通信に関する知識と多くの労力が必要となります。 また、 保安情報の伝送に関する国際規格 IEC62280 に準じて所要の性能が確保できていることを検証するための試験にも多くのコストがかかります。 そこで、 これらの設計や検証試験にかかる労力とコストを低減するため、無線通信ネットワークの伝送品質(制御電文の誤り率、遅延等)を計算し、列車が緊急停止する確率を求めることができるシミュレータを開発しました(図1)。
 本シミュレータでは、無線式列車制御システムを導入する線区の線形、基地局の位置、無線機の性能、ネットワーク構成、雑音源や干渉源等を設定するこ現場装置とにより、伝送品質の劣化や妨害等によって列車が緊急停止する確率を計算します(図2)。
 また、電文の誤り率や伝送遅延の計算結果が実在の無線通信ネットワークの特性と概ね一致することを確認しています。
 本シミュレータでは、電波法 やコスト等の制約から実車試験の実施が困難な条件でも、列車運行の安定性を短時間で評価で きるため、設計だけでなく、試作や実験の規模を縮小してコストを低減することが可能です。