1.空気ばねボルスタレス台車用の上下制振制御システムの実用化

 クルーズトレインと呼ばれるような豪華列車では、走行区間によらず優れた乗り心地が求められます。このような列車が地方交通線などのロングレールを敷設していない線区を走行した場合、レール継ぎ目通過時に車両の上下振動が増加し、乗り心地が大幅に低下する可能性があります。このような線区においても快適な乗り心地を提供するために、空気ばねボルスタレス台車用の上下制振制御システムを開発しました。
 可変減衰機能を持つ上下方向の油圧ダンパーを空気ばねと並列に取り付け(図1)、このダンパーの減衰力を車体の振動に合わせて制御し、振動を抑制します。コイルばね台車向けに開発した従来装置と比べ、指令電流に対する油圧ダンパーの減衰力制御性向上と指令値の与え方を工夫することにより、振動制御時の「ごつごつ感」を緩和しました。また、車体の剛体振動に加えて車体の弾性振動も低減できます。
 制振性能を確認するため走行試験を実施したところ、本システムの適用に加え、柔らかい空気ばねを使用した効果により、車体の上下方向の振動は、1 〜 2Hz 付近の振動加速度パワースペクトル密度 (PSD) のピーク値が従来車両の 1/10 となり、大幅な振動低減効果が得られました (図2)。乗り心地レベル(LT )は約 7dB 低減され、体感上も明確な乗り心地向上効果が得られました。
 本システムは 2013 年 10 月から営業運転を開始したJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」の全ての客車に搭載され、乗り心地向上の実現に貢献しています。