2.車体剛性と乗り心地を向上する吊手棒

 走行時に発生する車体の上下曲げ振動は、乗客の乗り心地に影響を与えるため、その低減が望まれます。鉄道総研では(株)総合車両製作所と共同で、従来着目されていなかった内部骨組や車内設備を活用した車体剛性、乗り心地向上手法の検討を進めており、その一環として通勤形車両に一般に装備されている吊手棒を活用した乗り心地向上手法を開発しました(図1、図2)。
 この手法は、吊手棒により左右の側構体、および側構体・屋根構体間を結合して、主に車体の断面変形を抑制することで車体の剛性を向上させるとともに、乗り心地の向上をめざしたものです。この考えに基づいて設計した吊手棒が、新しい車両で「内装ロールバー」の一部として実用化されました。
 当該車両の営業線走行時の振動測定を実施した結果、吊手棒を取り付けることにより、最も効果が大きい区間では曲げ振動に関連する車体床面の上下振動加速度パワースペクトル密度(PSD)のピーク値が 1/3 に減少し、開発した吊手棒が有効であることが確認できました(図3)。