１．列車衝突時の乗客傷害評価のための解析手法

　踏切衝突事故などにおける乗客の傷害低減対策の検討のため、乗客の傷害状況を精度良く再現する解析手法を開発しました。
　衝突事故時の客室内の衝撃加速度を検証するため、仕切や腰掛け等の車内設備を含む 1 車体有限要素モデルを構築しました。また、乗客の挙動を把握するため、クロスシートにダミー人形を衝突させる衝撃試験(図1)を行うとともに、クロスシート着座乗客の傷害状況を評価できる解析手法を開発しました。この試験と解析結果の比較から、ダミー人形の傷害値等が精度良く再現できることを確認しました(図2)。ダミー人形は評価できる衝撃方向が限定されており、乗客の姿勢や向きの多様性に対応するのが困難な場合があります。 このような状況においても傷害度を適正に評価できる人体有限要素モデル(人体モデル)を構築しました(図3)。この人体モデルと既存の着座正面衝突用のダミーモデルを、クロスシートのテーブルに対して正面、斜めおよび横方向に着座させ衝突解析を実施しました(図4)。 出力される最大胸部変位を比較すると、ダミーモデルは斜めおよび横方向の衝突において傷害を過小評価しますが、人体モデルは全方位の評価が可能であることを確認しました(図5)。
　車内設備を含む 1 車体モデルによる列車衝突解析と乗客挙動解析の連携により、乗客の傷害低減の観点からの車体構造および車内設備の提案が可能となります。