5.X 線フーリエ解析手法によるレール金属組織の転がり疲労評価

 レールは車輪による転がり接触を受け続けることで、表層に転がり疲労による塑性ひずみが蓄積して塑性変形を起こし、表層の金属組織は、通常の状態から変化します (図1)。そこで、レールの転がり疲労状態を評価するため、X 線測定によって得られる回折波の特徴(ピーク幅、強度や形状等)を利用した X 線フーリエ解析手法を提案しました。これにより、塑性変形する金属組織の変化を定量化することができます。
 本手法では、塑性ひずみと相関の大きい X 線結晶粒径と転位密度という新たな指標を用いてレールの転がり疲労状態を評価します。X 線結晶粒径とは金属組織の微細化の程度を表し、塑性ひずみが大きくなると小さくなります。また、転位密度とは金属組織の微細領域の乱れの程度を表し、塑性ひずみが大きくなると転位密度は大きくなります。この X 線フーリエ解析手法では、レール表面から内部に向かって、総じて X 線結晶粒径が大きく、転位密度が小さくなることで、転がり疲労の影響で変化する金属組織(図1)を評価することができます。また、レールの累積通トン増大等の使用履歴に応じて転がり疲労の影響が大きくなるため、転がり疲労状態を評価し易くなります(図2)。本手法により、交換レール等の転がり疲労状態を知ることができ、レール削正や交換等の周期を適正化する基礎データとしての活用が期待されます。