第323回 鉄道総研月例発表会

日時 2018年09月25日(火) 13:30〜16:40
場所 日本工業倶楽部 大会堂
主題 電力技術に関する最近の研究開発 

プログラムと発表内容

13:30~13:45
電力技術に関する最近の研究開発

鉄道総研の電力技術に関わる研究グループは、省エネルギー・省メンテナンスで 安定した電力設備の実現に貢献することを目標として定め、その実現に向けた研究活動を行っている。本稿では、こうした研究開発のなかから、特に電力設備の安定性向上を実現するための研究開発の取り組みに焦点を当てて紹介する。

発表者
電力技術研究部 部長 池田 充

13:45~14:05
VVVF制御車の再着線特性に対応した直流き電回路保護手法

近年製造されたVVVF制御車の加速時電流と事故電流の立ち上がり特性(ΔI電流)を区別するために、き電回路保護手法の改善が望まれている。そこで、都市近郊の直流変電所において回線電流とΔI電流を測定、分析した。その結果、ΔI電流は、VVVF制御車のパンタグラフが離線した後の「再着線」時に最大となるケースが多いことを確認した。そこで、再着線に伴う回線電流の変動は50ms以内に収束して立ち下がる特性に着目し、再着線と故障を判別するための複数のき電回路保護手法を示したので報告する。

発表者
電力技術研究部 き電研究室 主任研究員 小西 武史

14:05~14:25
可変リアクトルによる直流き電電圧制御手法の開発

直流き電システムでは、電気車の運転状態に応じてき電電圧を制御することで、回生電力の利用率向上による省エネルギー化が期待できる。現在最も普及しているダイオード整流器では、能動的な電圧制御が不可能である。そこで電圧制御が可能な新技術として、ダイオード整流器に対して可変リアクトルと制御装置からなる電圧調整装置を追加した高機能整流器を開発した。本発表では、そのコア技術となる可変リアクトルの機器構成と設計手法について報告する。

発表者
電力技術研究部 き電研究室 副主任研究員 森田 岳

14:25~14:45
電車線路設備におけるがいし汚損・腐食環境の定量化に向けた基礎検討

電車線路設備のがいしの汚損や腐食は、環境に依存し一律の管理が難しいため、設計・保守は経験に基づき状態保全が行われていることが多い。そこで、電車線路設備の腐食・がいし汚損環境の定量化を目指し、明かり区間の複数地点および2つのトンネル内複数箇所で腐食度とがいし汚損度を測定した。その結果、前者からはがいし汚損度から腐食度の推定を、後者からはこれまであまり知見のなかったトンネル内がいしの汚損状態の定量化を行った。本発表では、それらの結果について報告する。

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 臼木 理倫

14:45~15:05
光切断法を適用したトロリ線断面形状測定

トロリ線はパンタグラフのしゅう動により摩耗するため、摩耗状況を管理する必要がある。現在、トロリ線摩耗測定は手作業による残存直径の測定や、電気検測車によるしゅう動面幅の測定により行われているが、しゅう動面の状態により測定誤差が大きくなる場合がある。本発表では測定誤差を低減する新しいトロリ線摩耗測定手法として、光切断法を適用したトロリ線断面形状測定手法を提案するとともに、昼間に定置試験および夜間に保守用車上からの測定試験を実施し、本手法の適用可能性を検証したので報告する。

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 室長 根津 一嘉

15:05~15:20
休 憩

15:20~15:40
速度300km/h超に対応した高速シンプル架線

新幹線では更なる高速化による利便性向上が期待される一方、新幹線用ヘビーコンパウンド架線は補助ちょう架線など電車線構成部材の大規模な更新時期に達している。これに併せて部品点数が少なく保守性にも優れるシンプル架線が速度300km/h未満の線区で採用されるようになり、更なる高速線区においても導入の機運が高まっている。そこで、速度300km/h超の運転速度に対応した新しい高速シンプル架線を開発したので報告する。

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 主任研究員 常本 瑞樹

15:40~16:00
電車線設備のリスク評価手法とLCC算出手法の提案

電車線設備の事故や不具合を防ぐため、設備の定期検査や修繕が行われている。一方、検査、修繕、設備新設等のコスト削減が求められている。コスト削減の検討には、各種コスト(初期、メンテナンス、事故、廃棄)を検討する必要があるが、これらが体系化された例はない。そこで、在来線を想定したモデル線区を設定し、電車線設備に関わる各種コストの算出を行い、電車線設備のリスク評価手法及びライフサイクルコスト(LCC)算出手法を提案するとともに、これを用いてモデル線区のLCCを算出したので紹介する。

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 室長 早坂 高雅

16:00~16:20
架線・パンタグラフの3次元モデルの開発

架線・パンタグラフ系の動的挙動解析シミュレータは、架空電車線やパンタグラフの設計、開発を行う上でなくてはならないツールであり鉄道総研では継続的に改良を行っている。本発表では、最近の開発状況として、架線とパンタグラフのそれぞれの3次元モデルについて報告する。また、提案するモデルを使用したケーススタディー結果として、気温変化による架線の静構造変化などを紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 主任研究員 小山 達弥

16:20~16:40
集電系HILSシステムの開発 ※1

パンタグラフの定置試験装置と架線運動シミュレータを融合させた集電系HILSシステムを開発した。本HILSシステムは、パンタグラフと架線の相互作用を考慮できるため、定置試験でありながらパンタグラフが架線下を走行している状況を模擬したパンタグラフの性能確認試験が可能である。本発表では、300km/h走行時のハンガ到来周波数である約20Hzまでの架線の振動を表現可能なHILSシステムを紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 副主任研究員 小林 樹幸
 ※1 第324回月例発表会(平成30年10月17日(水)東京開催)で同じ内容を発表します。