第341回 鉄道総研月例発表会
日時 | 2020年10月16日(金) から |
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場所 | ウェブ配信(視聴無料) |
主題 | 電力技術に関する最近の研究開発 |
プログラムと発表内容
(関係研究部 電力技術研究部)
鉄道総研の電力技術に関わる研究グループは、省エネルギー・省メンテナンスで信頼性の高い電力設備の実現に貢献することを目標として定め、その実現に向けた研究活動を行っている。本発表では、こうした研究開発の取り組みについて、その具体的目標とこれまでに得られた成果について紹介する。
鉄道総研報告 Vol.34 No.9 「電力技術に関する最近の研究開発」
RRR Vol.77 No.7 「エネルギーネットワークによる省エネルギー化」
- 発表者
- 電力技術研究部長 重枝 秀紀
直流高抵抗地絡に伴う電流は列車の集電電流と比較すると小さいため、従来標準のシステムでは変電所で故障を検出することができない。電車線路に放電装置などを追加して地絡故障を検出する手法は既に実用化されているが、導入費用や保守作業が増加することが課題とされている。そこで、本発表では、1000A以上の電流でアークを伴う直流高抵抗地絡を、変電所の電圧・電流監視のみで検出する手法について紹介する。
鉄道総研報告 Vol.34 No.9 「大電流のアークを伴う直流高抵抗地絡の検出手法」
- 発表者
- 電力技術研究部 き電研究室長 森本 大観
トロリ線とすり板間に発生する交流アークがトロリ線断線時間に与える影響については、これまで、直流アークの現象に基づいた定性的評価が主体的であった。そこで、交流アークによるトロリ線断線試験を実施し、交流アーク電流に対するトロリ線断線時間の関係を定量的に明らかにした。加えて、連続して交流アークが発生してもトロリ線が断線しない連続許容交流アーク電流値の導出手法を確立したので報告する。
- 発表者
- 電力技術研究部 電車線構造研究室 研究員 和田 祥吾
エアセクションに電車が停車することにより生じるアークに伴いトロリ線断線事故が発生する場合がある。このようなトロリ線断線対策として、低コストかつ省メンテナンスであるエアセクション用複合架線を開発した。ここでは、エアセクション用複合架線がアーク消弧機能を有することを屋内実験で、良好な集電性能を有することをフィールド試験で確認したので報告する。また、複合架線を活用したアーク発生検知手法についても検討したので報告する。
鉄道総研報告 Vol.34 No.9 「複合架線によるエアセクション箇所のトロリ線断線対策の提案」
技術フォーラム 「AS複合架線構造を用いたトロリ線断線対策」
- 発表者
- 電力技術研究部 電車線構造研究室 副主任研究員 近藤 優一
高圧配電線路において、避雷器が劣化して地絡となり停電する事象が発生している。劣化した避雷器の外観には変化がないため、これまで探索・特定が困難であったが、駅バリアフリー化等の社会情勢に伴い電力安定供給の重要性が増し、ダウンタイム短縮が求められている。本発表では、直流電化区間の非接地式電路における避雷器の劣化を判定可能な新しい劣化表示器の仕様策定と試作を行った結果について紹介する。
鉄道総研報告 Vol.34 No.9 「高圧配電線路用避雷器の劣化表示手法」
- 発表者
- 電力技術研究部 き電研究室 研究員 樋口 靖展
高速用電車線に用いられている、クロム・ジルコニウム系析出強化銅合金を用いたPHCトロリ線は、鉄道事業者の小ロット需要に対して柔軟な対応ができない課題があるため、その課題を解決しつつ低コストなトロリ線の開発が求められている。そこで、コバルト・リン系析出強化銅合金を用いることで、PHCトロリ線と同等の強度と導電率を有しつつ、低コストかつ小ロット需要への対応が可能なCPSトロリ線を開発したので、仕様および性能評価結果を報告する。
鉄道総研報告 Vol.34 No.9 「小ロット需要に対応可能で低コストな高速電車線用トロリ線の開発」
- 発表者
- 電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 臼木 理倫
電車線の保全作業、その中でも特に検査業務の省力化・高度化が求められている。車両の屋根上にカメラを搭載し、画像処理によるステレオ計測を行うことで、現在は手作業で行っている架線構成の測定を自動化する「電車線非接触測定装置」を開発した。営業線で開発した装置の性能検証試験を実施し、電車線の3次元構造を時速130kmで測定可能であることと、取得した画像から電車線金具を90%以上の検出率で自動検出できることを確認したので詳細を報告する。
鉄道総研報告 Vol.34 No.9 「電車線非接触測定装置の在来線車載試験による性能検証」
鉄道総研報告 Vol.28 No.10 「ステレオ画像計測とレーザー測距を併用した架線の非接触位置測定手法」
RRR Vol.74 No.7 「画像とレーザーを用いて電車線を検測する」
- 発表者
- 電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 松村 周
パンタグラフや電車線の開発・設計支援や、架線・パンタグラフ系事故の原因究明を行うために、電車線の三次元配置やパンタグラフの形状を三次元で表現可能なシミュレータを開発した。本シミュレータでは、トンネル内流速を計算可能な空気流動シミュレータや、車両振動の解析が可能な車両運動シミュレータと連携し、これまでのシミュレータでは再現が困難であった条件を考慮することが可能である。本発表では、開発したシミュレータを概説するとともに、解析事例を紹介する。
鉄道総研報告 Vol.34 No.9 「架線・パンタグラフの三次元シミュレーション」
- 発表者
- 鉄道力学研究部 集電力学研究室 主任研究員 小山 達弥