第362回 鉄道総研月例発表会

日時 2023年08月25日(金) 13:30~16:55
場所 日本工業倶楽部会館2階 大会堂
主題 人間科学に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

関係研究部 人間科学研究部

13:30~13:45
人間科学に関する最近の研究開発

 鉄道総研人間科学研究部では、鉄道システムに関わる人の視点から、安全で、便利で、快適な鉄道を考えるヒューマンファクター研究を行っている。ここでは、最近の取り組み全体を概観しながら、鉄道従事員のヒューマンエラー防止、安全マネジメント等の安全性向上策および鉄道利用者の安全・安心に関する取り組みなどのいくつかの代表的成果について報告する。

<参考文献>
 鉄道総研報告 Vol.36 No.1「鉄道における最近の人間科学研究」
 鉄道総研報告 Vol.35 No.2「鉄道における最近の人間科学研究」
 鉄道総研報告 Vol.34 No.1「鉄道における最近の人間科学研究」
 鉄道総研報告 Vol.33 No.1「鉄道における最近の人間科学研究」

発表者
人間科学研究部  部長  水上 直樹

13:45~14:10
触車事故防止ルールの遵守意識に対する教育効果の維持

 鉄道の保守作業では、機械化・システム化による安全性の向上が進んでいるが、人の判断・行動が求められる取り扱いも残されている。これらの取り扱いにおいて、ルール遵守意識を高めるための触車事故防止教育の指導法を開発し、教育1か月後までの効果を確認したが、一般に、教育効果は時間経過に伴う低下の可能性がある。そこで、指導法のうち、「VR訓練」と「事例の置換え」を組合せた教育プログラムについて、実施1年後までの時間経過に伴う教育効果の維持を確認したので紹介する。

<参考文献>
 鉄道総研報告 Vol.34 No.1「触車事故防止ルールの遵守徹底に向けた安全教育法の開発」

発表者
人間科学研究部 安全心理研究室  副主任研究員  鏑木 俊暁

14:10~14:35
触車事故防止のためのダブルチェックを促すVR訓練法

 鉄道の保守作業では、機械化・システム化による安全性の向上が進んでいるが、人の判断・行動が求められる取り扱いも残されている。これらの取り扱いのうち、列車ダイヤのダブルチェックルールの遵守を促進するため、Virtual Reality(VR)技術を活用した訓練手法を開発し、VR空間内での体験内容や体験後に視聴する振り返り映像の内容による教育効果の違いを検証した。本発表では、開発したVR訓練手法の概要と教育効果の検証結果について報告する。

<参考文献>
 鉄道総研報告 Vol.34 No.1「触車事故防止ルールの遵守徹底に向けた安全教育法の開発」

発表者
人間科学研究部 安全心理研究室  主任研究員  村越 暁子

14:35~15:00
テキスト分析を用いたヒヤリハットの心理要因の研究

 ヒューマンエラーを防止するためには、その背景要因を把握し対策を講じる必要がある。そこで、ヒヤリハットを含めたリスク情報から、ヒューマンエラーの発生傾向を把握するためのテキストマイニング技術の活用を試みた。その一環として、本研究では、ヒューマンエラーが発生した時の心理要因を分析するコーディングルールを作成した。本発表では、その概要と分析結果について報告する。

発表者
人間科学研究部 安全心理研究室  研究室長  宮地 由芽子

15:00~15:25
啓発メッセージによる係員呼出しボタン使用の促進効果

 異常事象の発生時に旅客の安全を確保するためには、異常事象の発見やその通報などにおいて旅客の協力も重要となる。一方で、通報すべきと判断しても、傍観者効果や心理的な抵抗感等の心理的な抑制要因により行動に移せない可能性がある。そこで、本発表では、列車内において通報を促す啓発メッセージによる、旅客の通報行動に対する心理的抵抗感の抑制や通報に対する積極的な態度の促進の効果について確認したので報告する。

<参考文献>
 鉄道総研報告 Vol.37 No.9「情報提供の観点からみた車外への避難の類型化と課題整理」

発表者
人間科学研究部 安全心理研究室  主任研究員  増田 貴之

15:25~15:40
休憩

15:40~16:05
衝突事故時の乗客被害を抑えるための車内設備対策

 鉄道のさらなる安全性向上に向け、衝突事故などが発生した際にも被害を抑えるための衝突安全に関する研究に取り組んでいる。人間工学研究室では、事故時の衝撃で乗客が投げ出されて、列車内の設備や他の乗客と衝突することで傷害が発生する状況を対象として検討を行ってきた。本発表では、衝突事故時における乗客の傷害発生に至る状況を体系化し、これまで検討してきた乗客被害軽減のための車内設備対策を整理したので報告する。

<参考文献>
 鉄道総研報告 Vol.24 No.11「つり手の即座のつかみやすさ評価」
 鉄道総研報告 Vol.26 No.1「通勤列車の踏切事故時の乗客挙動シミュレーション」

発表者
人間科学研究部 人間工学研究室  主任研究員  中井 一馬

16:05~16:30
通勤車両内の横流ファン送風が温熱快適性に及ぼす影響の定量評価法

 通勤車両に設置されている横流ファンは、客室内の空気循環の他、乗客への清涼感の提供という重要な役割を担っている。一方、車内気温によっては寒さによる不快感の要因にもなり得るため、横流ファン送風が乗客の温熱快適性に及ぼす影響を的確に評価・予測し、送風制御に活かすことが重要となる。そこで、横流ファン送風が乗客の温熱快適性に及ぼす影響の定量的評価手法を開発し、当該手法の予測精度を過去に実施した通勤車両内での被験者実験により検証したので報告する。

<参考文献>
 鉄道総研報告 Vol.29 No.7「夏季の通勤列車内の温熱快適性予測手法」
 鉄道総研報告 Vol.37 No.8「夏季における通勤車両内の横流ファン送風の影響を考慮した温熱快適性評価手法」

発表者
人間科学研究部 快適性工学研究室  研究室長  遠藤 広晴

16:30~16:55
鹿の習性を利用した鹿忌避音による事故防止法の開発

 鉄道車両と鹿との事故防止対策として、鹿の習性を利用した「忌避音」および、その車上からの吹鳴装置を開発した。忌避音を吹鳴しながら走行する車両から鹿の行動観察を行ったところ、鹿忌避音には、列車接近に先立ち、沿線にいる鹿の逃走を促進する効果があることがわかった。また、運転士に負担のない実用的なシステムとして衛星測位システムを利用した自動吹鳴装置を開発し、営業車両に装置を搭載した効果検証試験の結果等について報告する。

<参考文献>
 鉄道総研報告 Vol.31 No.11「忌避音による鹿接触事故防止技術の開発」
 鉄道総研報告 Vol.35 No.2「鹿忌避音装置の開発」
 RRR Vol.78 No.9「鹿忌避音で列車と鹿の衝突事故を防止する」

発表者
人間科学研究部 快適性工学研究室  主任研究員  志村 稔


関係研究部

 人間科学研究部