24. 列車速度向上により地盤振動が増加する箇所の抽出手法

 列車走行に伴う地盤振動は、一般には列車速度の対数に比例して直線的に増加します。
 これまで鉄道総研ではこの直線の傾きを、建設時の地盤調査で得られる地盤の表層の厚さおよび表層の平均N値(堅さの指標)に基づいて事前に評価する手法を提案してきました。
 しかし、地盤表層の厚さとN値が同程度であっても、局所的な変動により他の箇所と異なる増加量となる場合がありました。

 そこで、数値シミュレーションと過去の実測値に基づき詳細に検討し、構造物の振動特性(例えば桁の固有振動数など)が局所的な変動に影響することを明らかにしました。
 さらに、この知見に基づき、列車速度向上時の地盤振動の増加を、詳細な数値解析などを行うことなく評価する手法を作成しました。
 この手法では、地盤の振動増幅特性と構造物の固有振動数などの振動特性を組み合わせて(図1)、評価対象の箇所の振動伝達特性をモデル化(図2)しており、実測データに見られるような局所的な変動を伴う地盤振動増加を評価できることを確認しました(図3)。

 本手法では、まず地盤条件による速度向上時の地盤振動増加量の概略評価を行い、次に影響が大きいと考えられる地盤条件下で地盤振動に影響しやすい構造物の特性を絞り込む、という手順で、地盤振動の変動が相対的に大きくなる可能性がある地盤条件と構造物特性の組合せの事前評価などに適用することが考えられます。