29. 地震時の復元性能に着目した車両挙動の解明

 これまで、地震時の車両挙動の評価では、車輪とレールの相対左右変位70mm を安全限界と
しています。一方、この安全限界を超えた後の車両の挙動は明らかではありませんでした。

 そこで、従来の安全限界を超えた領域での車両の挙動を評価できる車両運動シミュレーション
を開発しました(図1)。合わせて、鉄道総研所有の大型振動試験装置において縮尺1/10 在来線
模型車両の加振試験を実施し、車両が脱線した加振周波数と加振振幅との関係を整理しました(図2)。
同図から、開発した車両運動シミュレーションよる計算結果は試験結果と概ね一致していることを
確認しました。

 さらに、在来線車両を対象にしたシミュレーションを実施して、車輪とレールの相対左右変位
が70mm を超えてもなおオンレールに留まる限界(これを復元限界と呼ぶ)を求めて従来の安
全限界と比較しました(図3)。この場合、0.4 〜0.6Hz の範囲では、従来の安全限界以上の加振
振幅に復元限界が存在し、最大で100mm 程度大きい結果となりました。

 このように、本成果は地震時の走行安全性の詳細な評価や、脱線・逸脱等に対して耐性の高い
車両設計に活用できます。