30. 大型低騒音風洞を模擬する数値風洞

 鉄道総研における空気力学に関する研究開発では、米原大型低騒音風洞が重要な研究開発ツール
となっており、毎年200 日以上、様々な風洞実験を実施しています。風洞実験のより効率的かつ
高度な推進を目的に、風洞実験を数値シミュレーションで再現する「数値風洞」を開発しました。

 数値風洞の構築においては、米原風洞気流の把握およびその数値的再現を行いました(図1)。
気流の数値的再現には、複雑形状の流れを効率よく計算できる、鉄道総研が開発した「空気流シミュ
レータ」を用いました。また、三次元レーザースキャナーを用いた供試体の形状モデリングを導入
し、形状定義から計算実行までを一貫して実施するシステムを構築しました(図2)。数値風洞に
よる計算結果と実験結果を比較したところ、良好に一致することを確認しました(図1 右、図2 右)。

 構築した数値風洞は実験条件の絞り込みや測定点数の削減など風洞実験を補完するツールとして
活用できます。これにより、数値風洞と風洞実験を組み合わせることで実験期間を短縮することが
でき、ひいては開発期間を短縮できます。また、鉄道事業者等の突発的な課題においては、風洞実
験に頼らずとも迅速に対応できる新たな選択肢として、風洞と連携した数値風洞を提供できます。