31. 車両走行と連成した排雪シミュレーション手法

 新幹線では現車による排雪試験などの結果に基づき、軌道上の積雪深に応じた走行速度規制等
がなされています。しかしながら、現車試験はコストと期間がかかるため、試番数には限りがあ
ります。そこで、本研究では、現車試験を補完できる解析手法として、鉄道総研が開発を進めて
いる粒子シミュレータを改良した排雪シミュレータを開発しました。

 排雪シミュレータの開発は、縮尺模型を用いた排雪実験とともに進めました。排雪実験では、
鉄道総研の塩沢雪害防止実験所に設置されている全長60m のガイドレール内を走行する台車に
スノープラウを搭載した1/10 車両模型を取り付け、スノーベッドを通過させて排雪状況を再現
しました(図1)。排雪解析では、「ある一定の力がかかるまでは変形しないが、その値を超える
と流動しだす」という雪の性質をモデル化することに成功しました。図2 は1/10 車両模型によ
る排雪実験を再現した排雪解析の結果です。実験と解析のスノーベット衝突時の排雪力の比較
から、排雪シミュレータは排雪実験を十分に再現することが可能であることを確認できました
(図3)。また、排雪シミュレータで計算した排雪力を車両運動シミュレータに渡し、車両の姿勢
と移動量を返す、連成手法を開発しました(図4)。本連成手法は、現車による排雪試験条件の
事前検討、排雪走行時の走行安全性の評価、新規スノープラウの開発等に用いることができます。