24. 回生電力融通を考慮した小規模遅延時の省エネルギー運転

 数分程度の小規模遅延時には、乗車率平準化や駅間での減速・停止を避けるため、駅で列車を
抑止することがあります。この場合、駅で抑止せずに次駅まで低速で走行すれば力行電力量を削
減でき、また駅での抑止時間を調整して列車同士の力行とブレーキのタイミングを合わせれば回
生電力の使用量を増加できますが(図1)、両者はトレードオフの関係にあります。そこで、数
理最適化手法とシミュレーション技術を用いて、両者を両立させる手法を開発しました。まず、
ある2 列車の力行とブレーキが重なる時間、すなわち回生電力を融通できる可能性を表す「回生
融通指数」を定義します(図2)。次に、既開発の列車運行電力シミュレータを用いて、各列車
の各駅間で走行時分を変えた場合の力行電力量をあらかじめ計算しておきます。これらを用いて、
力行電力量の合計と、回生融通指数の合計に係数W を乗じた値との差を最小化する数理最適化
問題を解きます。係数W は、値が大きいほど回生電力融通を優先することを示します。

 小規模遅延発生から平復までを含む1 時間の列車ダイヤに対して、省エネルギー化を考えずに
駅抑止を実施した場合と、開発手法を適用した場合を比較したところ、Wの値が大きいほど力行
や回生電力量が増える傾向(図3)や、開発手法で約2% の省エネ効果が得られることを確認し
ました(図4)。本手法は、リアルタイムに着発時刻とランカーブを変更するため、自動運転と合
わせた実現が有効です。また、省エネルギー化を考慮した計画ダイヤ作成時にも適用できます。