2. 近接開削工事の施工による影響を考慮した既設杭基礎の耐震診断法

 都市部では、新線建設や既設路線の地下化や線路下横断工による踏切の解消などのプロジェクト
が数多く行われています。このようなプロジェクトでは、既設鉄道構造物に近接して地下構造物が
新設されることが大半ですが、開削工事として掘削土留め工を施工したのちに既設鉄道構造物近傍
を一旦掘り下げるため、施工中の近接開削工事の影響を考慮した既設杭基礎の診断を行う必要があ
ります(図1)。特に、開削工事の中には既設杭基礎の水平抵抗が低減しますが、そのメカニズム
は未解明であり、耐震診断法も確立されていませんでした。

 そこで、近接開削工事の影響を考慮した既設杭基礎の水平抵抗メカニズムを大型模型実験や数
値解析によって明らかにするとともに、耐震診断に用いる構造解析モデルを提案しました(図2)。
これにより、掘削土留め工と杭の離隔距離に応じて生じる相互反力と、掘削土留め工の抵抗幅を
反映した既設杭基礎の耐震診断が可能です。この診断法を活用することで、近接開削工事中の既
設杭基礎に必要な耐震性能を確保するための土留め工の規模等が明らかになるとともに、これま
では必要とされていた地盤改良等の大規模な対策工が不要となり、試算では建設コストを約2 割
削減できることを確認しました。